1999年のロストロジック

ろろろーる!!

プロローグ 終わりの日

真っ赤な空だ――


轟々と唸る風の音がうるさい。




 煤臭い空気がまとわり付いて鼻がツンとする。


巻き上がる黒煙が立ち上り、空へ至ると同時に風に消える。


 爆発音、怒号、悲鳴――あらゆる音が風の中から聞こえる。




 「ごほっ……!」




 湿った咳が漏れた。鉄の味がする。


 どうやら内蔵が潰れているらしい。


 


 きしむ体に力を込めて体を起こした。狭くなった視界を巡らせて世界を見る。




燃える空。燃える街。燃える人。世界の終わりがそこにはあった。




 天空から街を覆うように、純白の帯が降り注いでいる。しなだれるように地に触れた純白は無数の糸に分かれ、建物を、人を貫き燃やしていく。


白い、白い人の腕がうごめいて蹂躙していく。


美しく無慈悲な死の合掌が生命を潰し、均していく。




 抵抗するものもいる。弾薬の限りを放つ自衛官や乗用車で突撃する一般男性。


 我が子を庇いながら小さなナイフを掲げる女性。


 誰もがあらがっていた。




 しかしその全ては意味をなさなかった。


無慈悲の奔流は無感情にそれらを平らげていった。




そしてその波は眼前にも迫っていた。 


どのみち助かることはない。一呼吸、息を止め瞳を閉じてその瞬間をただ待つだけだった。






―――1999年12月31日。


稀代の大預言者 ノストラダムスが残した{恐怖の大王が降りてくる}という予言は成就した。




世紀末の世界は正しくその日に終わりを迎えた。




ただし―――


  私にとっては95回目の【世界の終わり】だ。

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