Extra edition 1

第212話

六神と元サヤに戻って、一ヶ月が経った。



会社から海ばかりを眺めている私たちは、現実逃避のため巨大プール併設のリゾートホテルに来ていた。



潮風でベタつかないっていい。



私たちっていうのは、私と六神と、まゆゆと池駒の4人で。



六神には、貴重な土日をなんで池駒と福間に邪魔されなきゃなんないの?と心底嫌な顔で言われたけれど、部屋はカップル同士で露天風呂付客室であること、夜20時以降はカップルの時間であることを条件にダブルデートをしに来ている。



4人だとお安いから。お得だったし、何よりまゆゆがクーポン持ってたから。


 





そんなお得日和なプールサイドでのこと。



「お姉さん、一人?それとも友達と二人で来てたりする?」



飲みものを買いに行って、天然水を持ちガゼボに戻る途中だった。金髪と銀髪の男性二人組に声をかけられたのは。



「あ、私神様に興味はありません。」


「違うから。宗教の勧誘じゃないから。」

「プールで信仰されてもご利益ないから。」


「え?じゃあ何?なんの勧誘ですか?」


「ナンパだよナンパ。言わさないでよお姉さん。」


「は?ナンパ?もうちょっと広い視野で周りを見渡してから言って下さいよお兄さんたち。」


「……広い視野?」


「ほら、例えばあそこで一人ぽつんと座ってる桃髪の女性。骨格ストレートの巨乳があたかも誰かに声をかけられないかなみたいな雰囲気出してるでしょ?」


「あー…あれはちょっとハードル高いってゆーか。」

「因みにお姉さんのそれは虚乳?」


「じゃあつまり、私は引っかかりやすそうな雰囲気出していたと、そういうこと?手頃そうとかそういう意味で声かけてきの?!」


「……いや、そういう意味じゃなくてさ」

「……なんかごめん。」



ほんの4メートルほど先には六神と池駒が立っていて、私の方をじっと見ている。あ、助けに来てくれるの?期待していいのねすーぱー六神。わくわく。



「六神、いいのあれ。実来ちゃんがナンパされてるっぽいけど。」


「実来のあの対応力、営業に活かせそうだからあと5分観察したい。」


「あれ、お前って俺が思ってる以上に最低な彼氏だった?」


 


いいから早く助けにこい。

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