第8話
そう言ってこの男は、私が手に持つカップのカレーラーメンを上から取り上げて、なぜか目の前にある“あんバターブリオッシュ”を渡してきた。
「……私のお昼、ミックスパンかよ。」
「ミックス麺は俺がもらっとく。」
私もあんたも決して賛同していない商品を持っているのに、とりあえず会計の列に並ぶのはなんでだろう。
あんバターブリオッシュを手に、私の前を並ぶヤツの背中を見つめる。ベストを透して今にも男の色気が香ってきそうな、距離。
も少し上を見上げれば、きれいに整えられたうなじがある。日本男児らしからぬというべきか、ヤツの黒髪はさらりとした猫っけだ。
この程よい背中の逆三角形を観察しながら男女においての友情というのは、どういうものなのかを考えてみる。
例えば、「幼なじみ」。
長年連れ添ってきた男女のじれじれな関係なんてのが少女漫画のあるある設定で登場するけれど。
例えば、「王子と地味子」。
下心を持って近付いたはずの王子と、まさか自分のような5軍すぎる相手を、恋愛対象にするとは思ってもみない地味子との“駆引き”の過程を友情と呼ぶ場合もしかり。
この二つの行き着く先は、“恋人”だということが読者にも分かっているから、その過程部分でいかに恋人未満のきゅんを読者に与えられるのかがなによりも重要で。
その恋人未満のきゅんが、行き着く先をより一層楽しみにさせてくれるのが男女間の友情、だ。
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