第6話

同窓会当日は夜勤明け。


午後1時からの開催だったから、時間に余裕があると思って仮眠をとったらまさかの寝坊。


飛び起きてから出るまでの時間は戦いだった。


久しぶりに会う同窓生達。そして少なからず恋心を抱いていた相手に会うわけだし、気合いだって入れていた……のにまさかの寝坊。


結局普段の姿に毛が生えた程度のお洒落が精一杯。


肩より少し長めのアッシュブラウンの髪は、サイドを少し残してアップにしてシンプルなバレッタで留めた。


白のタートルに黒のジャンパースカート。ポケットに同色のファーがついたもの。首元には派手すぎないネックレスを付けた。白いファー付きのコートはお気に入りのものだ。


うう……、夜勤明けじゃなくて休みを取れば良かった。


嘆いたところですでに遅い。お酒を飲むことも考えてバスを使って同窓会が行われるホテルへと向かった。


ホテルの入り口には我が懐かしの母校名が入った立て看板があり、フロントで会場が何階であるのかを確認した。


フロントの女性の清潔感のある綺麗な指先が示す先のエレベーターを見れば、今しがた誰かが乗り込む所で、私も慌ててそのエレベーターへと向かった。



「乗りますー」



声を上げて、それに答えてくれた人影に会釈をして乗り込む。


はぁ、良かった。


息をついて、目の前に立つ人影を見上げた。



「ありがとうございます……?」



視線の先にいる懐かしい面影をもつ男性は、私と同じようにまじまじと視線を向けて来る。


あ、多分……。



「えっと……?」


「樫……?」



あの頃の樫とはもちろん違っていた。高校生だった男の子から、見事に大人の男性に変身していた。


思わず見惚れて言葉を失う位に、動揺している自分が情けない。

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