Friend.Ⅱ

第9話

夢現に聞こえていたのは、颯斗の私の名前を呼ぶ声だった。



百合、百合と何度も何度も呼ばれていた気がする。



そう言えばいつからお互いの事を名前で呼ぶようになったんだっけ?



出会った時は『神流くん』、『阿藤さん』だった。



同じクラスになって、隣の席になって、なんだか話しやすい人だなと思ったのが最初。



そのうちお互いの得意科目の勉強を教えあうようになって、意外にも趣味が合って、話しているのが楽しくて……。



いつからかなんて覚えていない。



気付いた時には、『颯斗』『百合』と呼び合っていた。



颯斗の隣があんまりにも居心地が良くて、その場所を誰にも渡したくなくなってた。



女扱いされていないから、最も親しい女友達として隣りにいられたのだと思うけど、颯斗の気持を確認したことはない。



男って、そういうことに疎い生き物だと知っていたから。



意識させて今の心地よい関係を壊すなんて絶対嫌だったから。



でも、私は……好きなのかなって思ったこともあった。



周りに彼氏彼女として付き合う子達が増えていくと、『あんた達は違うの?』と聞かれることもあって、私は勿論颯斗も笑って否定していたっけ。



でもふとした時に、もしかしたら颯斗も少しは私のこと……なんて思ったことはあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る