第32話

「まぁた、お前らは……」



御園生さんと菅谷さんの言い合いをあしらうように、響いた口調は小幡さんのものだった。



「小幡、」


「小幡くん、」



二人は呆れた表情を向ける小幡さんに視線を向ける。



その視線を無視して、小幡さんは、シートの上に靴を脱いで上がり、白川さんを促して座らせた。



「……大丈夫?」



気遣うような声音を白川さんへ向けた小幡さんの態度に、回りにいた皆が首をかしげた。



「ありがと」



柔らかく微笑んで答えた白川さんは、いつになく穏やかで。



自然添えられた手のひらが、腹部をさすっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る