第34話

風馬の手紙を胸に抱き締めた。



10歳の時の風馬が愛しくて、




純粋な想いに切なくなった。




「風馬、私ね……風馬が好きだよ」




頬を涙が伝う。




木にもたれたままの風馬は、小さく「ん、」と呟いただけ。




その答えが悲しかったんじゃない。




ただ、ただ、涙が溢れた。




風馬も、桜の木も、




そんな私を見下ろすだけ。




私の髪に、肩に、膝に、はらはらと、舞い落ちる花弁はまるで私を慰めてくれているみたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る