第20話
「咲良」
その声音はまるで直接脳に響いてきたかと思うくらいに、はっきりと聞こえた。
「風馬?どこ?」
姿の見えない相手に不安が襲う。
「う、え。」
やっぱりそれは直接脳に響く。
見上げると、太い枝の上に座る風馬が見えた。
「バカ、危ないよ!」
声をあげると、風馬は小さく笑って私の目の前に飛び降りてきた。
軽々と。
まるで体重を感じなせないその身の熟しに、ほんの僅かな違和感を抱きつつも。
目の前に風馬がいる。
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