第51話
本当に不思議だ。
あれ程苦手だった女子に……
いや、違う。
アイツだったから、惹かれた。
俺の想いを認め、さらに俺に壁を壊す切っ掛けをくれた。
アイツだったから。
「大丈夫か?」
「伊吹……?」
普段俺を呼び捨てにすることなんかないくせに。
「傍にいて。離れて行かないで……」
いつもは俺以外のヤツを頼るくせに。
細い腕が俺の首に回り、耳元で何度も、何度も俺の名前を呼ぶ彼女の声に脳髄を揺さぶられて。
俺は、アイツに堕ちて行くんだ。
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