第64話

「あ……」



不意に思い出したとでも言うように、高田くんが声を上げた。



「頼まれてたことがあったんだった。俺、宇野からアンタに伝えて欲しいって……でも、アンタにすっげムカついてたし、まさかアイツがあんな嘘をつくなんて思いもしなかったから、今の今まで忘れてた」



しまった!と落ち込む高田くんを急かして伝言を聞いた。



「あの日言ったことは全部嘘だからって。April foolだからって。もし傷つけたのなら、ごめんって。ヒドイ俺のことなんて忘れていいよって。俺意味分からんかったし、アイツに頼まれたからって伝えてやるもんかって思ってたし。だって、アンタ友達できて今では楽しそうにしてるじゃん。アイツはいないのに……。アイツは今1人なのに」



「April fool。そう言えば、あの日は4月1日だった……」



告白も嘘だったってことを伝えたかったの?


でも、こんな風に高田くんや茶原さんから話を聞いた後じゃ、そんな嘘無意味だよ。


もし、高田くんが始業式の日にその言葉を私につたえていたら、私はきっと彼のその言葉を信じた。


そして、傷ついて宇野くんに揶揄われたんだって、彼のことを恨んで、それで忘れるために今頃必死になっていたかもしれない。



「バカだよな、アイツマヌケだ。御門のこと騙すつもりなら、俺にだってもっと上手くいうべきだったんだ」


「正直な子だったからねー。嘘でも好きな子のこと悪く言うなんてことできなかったんだろうね」


茶原さんまで呆れてしまっている。

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