第32話

「な、行くだろ?」


「……うん。行く。行きたい」



宇野くんの気持ちも、そして自分の気持ちも分からないままだけど、宇野くんと一緒に水族館には行きたい。


だから、今は素直に自分のこの気持ちに従うことにした。


明日の待ち合わせの場所や時間を決めて、チケットは宇野くんにそのまま持っていてもらうことにした。



「じゃあ、いろはまた明日な……と、そうだ忘れてた!」



ボランティアの時間が終わり、外へ出てお別れをした途端、宇野くんが駆け寄ってきた。


そして徐にポケットからスマホを取り出して、目の前に出した。



「RINE教えて」


「えっ?あ、RINE?」


「そう。俺さ、まだいろはの連絡先知らねーやと思って」



そういえば、図書館で会うようになって、一緒に図書ボランティアをするようになって、もう10日位になるのに、私達は連絡先すら知らなかったんだ。


普段から友達とRINEをすることもない私は、彼の連絡先を知りたいと思うに至らなかった。


バッグからスマホを取り出して、RINEのアイコンを開く。



「よし!いろはのRINE GETだ」



最近では当たり前のように見せてくれる無邪気な笑顔に、胸のあたりがくすぐったい。


私のスマホの中に入った宇野くんのRINEのプロフを見て、思わず声が出た。

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