three color

第22話


「御門、次これ読んでみ?」


「これ?」



宇野くんに渡された本をペラペラと捲って、斜め読みしてみた。


書かれてある文字の大きさだとか、書かれてある文章だとか、台詞だとか、そういったものを見ているとなんとなく惹かれる時がある。


そう言う本に出会うことができると、とても得をした気分になる。


宇野くんから勧められた本は、なんとなく私好みで、読んでみようと思わせるものだった。



「御門、そういうの好きそう」


「……うん。多分好き」



素直に認めたのは、彼にこうして勧められた本が今日で片手は埋まり、そのどれも好みにあったものだったからだ。


外れたことがなかったから、そのうち彼が選んでくれる本を、待ち遠しく思っている自分がいた。


図書館で2度目に会ってから、今日で6日目。


毎日図書館に通うようになって、そうするといつもの席に宇野くんはいて、本を読んだり、うたた寝したりと、そこにいるのが当たり前のようになっていた。


私も敢えて違う席に座る事をやめた。


私だけが気にしているのもおかしい話だと思って。


私は本を読みたいから、図書館に来ている。


そして宇野くんも、本を読むか、昼寝をするのにちょうどいいから図書館に来ている。


そんな風に思う事で少し気が楽になれる気がした。


そンな日々の中で、彼は急にふいっと席からいなくなったと思ったら、本を一冊手に戻って来て「読んでみたら?」と勧めてくるようになったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る