three color
第22話
◇
「御門、次これ読んでみ?」
「これ?」
宇野くんに渡された本をペラペラと捲って、斜め読みしてみた。
書かれてある文字の大きさだとか、書かれてある文章だとか、台詞だとか、そういったものを見ているとなんとなく惹かれる時がある。
そう言う本に出会うことができると、とても得をした気分になる。
宇野くんから勧められた本は、なんとなく私好みで、読んでみようと思わせるものだった。
「御門、そういうの好きそう」
「……うん。多分好き」
素直に認めたのは、彼にこうして勧められた本が今日で片手は埋まり、そのどれも好みにあったものだったからだ。
外れたことがなかったから、そのうち彼が選んでくれる本を、待ち遠しく思っている自分がいた。
図書館で2度目に会ってから、今日で6日目。
毎日図書館に通うようになって、そうするといつもの席に宇野くんはいて、本を読んだり、うたた寝したりと、そこにいるのが当たり前のようになっていた。
私も敢えて違う席に座る事をやめた。
私だけが気にしているのもおかしい話だと思って。
私は本を読みたいから、図書館に来ている。
そして宇野くんも、本を読むか、昼寝をするのにちょうどいいから図書館に来ている。
そんな風に思う事で少し気が楽になれる気がした。
そンな日々の中で、彼は急にふいっと席からいなくなったと思ったら、本を一冊手に戻って来て「読んでみたら?」と勧めてくるようになったのだ。
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