第14話

「あの、」



近くにいた若い女性の職員に声をかけた。


読みたかった本が貸出中なら、予約をしておこうと思ったのだ。


探していた本の名前を数冊挙げると、彼女は「あぁ、もしかして」と思い出した様子で声を上げた。


そして徐にクスクスと笑い始めた。


なんだろう。ちょっと感じ悪いなって思った。


そんな私の気持ちに気付いたのか、彼女は「ごめんなさいね」と頭を下げてから、私を2階へと誘導した。



「頼まれていたの」


「え?」



歩きながら彼女が口を開く。図書室の中、声を少し落として。



「ほら、あそこに座っている男の子に」



指差した先にいたのは、数冊積み重ねた本を枕に寝ている宇野くん。


こちらには気付いていない。


私は足を止めて先を行く彼女の腕を引いた。



「あのっ、どうして……」


「あ、もしかして会いたくなかった?」



会いたいか会いたくないかと聞かれたら、別に会いたくなんかなかった。



「……3-4日位前からあなたが話していた本を必ずキープしてあの席に座る男の子のことが、職員の中でちょっと話に出てて。うちの職員が声をかけたの。だって手にした本を読むでもなく枕にして寝てるだけなんだもの」



確かに本も読まずに図書館に来て寝ている姿は目立つだろう。

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