第12話

「やっぱり宇野くんって変な人」


他にいう言葉も見つからなかった。


きっと嫌な思いをさせたかもしれないけれど、それで彼と距離ができるのなら、ま、いいか。


そう思ったのに……。



「そっか。できれば褒められた方が嬉しいけれど、変な人っていうのでもいいか。御門さんの中で、俺は変な人としては存在出来てるってことだもんな」


言葉を失うというのは、きっとこういう時のことだと思った。


宇野くんのこういうポジティブさは、学校では見たことがない。


距離をとって離れた分の半分だけ、距離を詰められた気分になった。


プラマイゼロにはならない分、押し付けられている感じが少ない。



「あ、本を読むのを邪魔してごめん。今日はもう帰るわ」



じゃあな、とその場を去っていく彼の背中を唖然として見つめた。


言いたいことだけ言って、あっさり帰ってしまった。


なんだか、拍子抜けした気分だ。


彼がもっと距離を詰めて来ようとしたり、押し付けがましい態度をとったのなら、遠慮することなく邪魔だと言えたのに。


よく分からなくて胸の隅っこが変な感じ。


糸が絡まって解けなくて、イライラしてくる少し前の、そんな気分。


すっかり本を読む気が失せてしまって、私は本棚へ本を返して早々と図書館を出た。

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