第1章

新学期

第2話

桜並木の中を自転車で駆けて行く。


新学期になって、あたし、倉田萌くらたもえは高校2年生になった。


駐輪場に自転車を停めて、いつメンのところに小走りで近づく。

「香音、おはよ!」

「萌おはよう。今日もかわいい!天使!」


深山香音みやまかのんは、ぱっちり二重でふわふわの髪を下ろしたのがよく似合う美人さん。


「おい香音。俺にもかっこいいって言え」

「……かっこいい、よ……」


西澤祐樹にしざわゆうきは香音と付き合っていて、もうすぐ一年。


香音はいつも顔を赤らめて祐樹を褒めるから、見てるこっちが恥ずかしくなる。


祐樹はダークブラウンのさらさらの髪で、みんなの前ではクールなのに、香音にはデレデレ。マジで、見てるだけで幸せになる。


「萌、昨日の"バイト"どうだった?」

香音の一言に、あたし達3人は"情報屋"の顔になる。


あたし達はごく普通の高校生。昼間はそうかもしれない。


友達がいて、授業を受けて、バイトをして。


ただ、そのバイトが特殊だったりする。


夜の8時から10時の間、好きな日、好きな時間に行ける。シフト制とかではなくて、気が乗ったら行く。そういう風になっている。


場所は一部の人しか知らない。街の中心部にあるアーケードの隙間の路地を縫うようにしてたどり着くのが、夜顔よるがお。あたし達のバイト先。


「昨日は特に収穫なし」


上手くいく日もあればそうでもない日もあるのがこの仕事。

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