第42話

ふと思った。


どうして彼はこんな風に私の事を考えてくれているんだろうって。


彼とは金曜日の夜だけの関係だったけれど、身体だけを繋げていたわけじゃなかった。ほんの少しの時間だけだったけれど、理央くんは私の他愛のない話を真剣に聞いてくれたり、逆に楽しい話を聞かせてくれたりした。


一晩だけの、儚くて脆い関係だったけれど、いつだって私に向ける言葉に嘘はなかった。


彼の言葉はいつだって温かかった。


嘘ばかりの私に、彼はいつも優しくしてくれた。


「……どうして?」


「……?」


「……どうしてこんなに優しくしてくれるの?……私はずっとあなたを騙して、嘘ばっかりだった……それなのにどうして……」


こんなに大切に触れてくれるんだろう。


こんなに優しく愛してくれるんだろう。


喘ぐ様に問うた言葉に、彼は額に流れる汗を拭いながら小さく笑った。


「そんなの決まってる」


「……?」


「あんたが好きだからだよ……。あんたを喜ばせたいから。体だけじゃないよ、いつも、どんな時だって俺が……俺があんたを笑顔にしたいから……」


だから、どうして?


私は貴方にそんな風に思ってもらえる人間じゃない。


「嘘……ついてばかりだったのに……」

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