第21話

「おはようございます」


◯タバに寄ったこともあって、いつもより少し遅くなった私は、すでに来ていた敷島さんに近付いた。


「おはよう、あ、それ◯タバのだ」


目敏く私が抱えた袋に目を向けた彼に、袋の中からカフェラテを1つ取り出して渡した。


「ありがとう。遠慮なくいただく」


黒縁眼鏡の奥の穏やかな目元が弧を描く。


ホッとした。


彼が纏うこの穏やかな空気は、私をいつも安心させてくれる。


理央くんといるときの私は、何処もかしこも偽りで、気が抜けなくて彼と会った後はほんの少し気怠さが覆う。


だけどその気怠さを代償としてでも、彼から与えられる熱情は、まるで禁忌の薬物のように私を捉えて離さない。


ううん。


彼はいつだって私を離すことができる。


離れられないのは、私だけだ。


でも、いい加減終わりにしなきゃ。


今日は金曜日。


彼との約束の日。


私は今日、理央くんにお別れを言うことに決めていた。

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