第5話

「……帰るわ」


胸を押して、彼から離れた。


「カナ、」


「……お休みなさい」


彼の目を見ないようにして支度を済ませて、最後にそれだけ言って部屋を出た。


もう、追ってくる声はなかった。


彼の事だから、慰めてくれる相手は他にもいるだろう。


私がいなくなった後も、寂しければ他の子を呼べばいい。


私には彼を縛ることはできないし、したいとも……思っていない。


スマホを取り出して時間を見る。


12時を少し過ぎていた。


金曜日の夜は終わり。


大人の恋愛ごっこは、引き際が肝心なのだ。

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