第2曲目 二重人格と閉じ込められた想い
家に帰ると、まるで二重人格を演じているかのようだった。外面では仲良しの兄弟を装わなければならないが、心のどこかでは「アイツ」との関係に苛立ちを覚えていた。正直、あの公園でからかっていた頃と比べても、特に深い関係になった実感はなかった。むしろ、あの時の楽しさが恋しくてたまらなかった。
家の中では、オレはいつも気を遣いながら行動していた。母がいる前では、七星をしっかりと守っている弟として振る舞わなければならない。しかし、母が視界から離れた瞬間、悪い自分が顔を出すのだ。両親の目が届かないところでは、オレはしてきた仕草を繰り返した。彼のことをからかい、バカにし、無視する。すると、彼はいつも黙ってうつむいてしまう。その様子を見ていると、最初の頃の無邪気さや楽しさが次第に失われていく気がした。
七星はトランペットを吹くのが得意らしい。
ある晩、彼が練習している音を聞いてしまった。
美しいメロディが静かな夜の空間を満たしていく。
それは、一瞬の内にオレの心を揺さぶるものだった。
そのとき、オレはトランペットに興味を持った。
しかし、その瞬間と同時に、彼の才能に嫉妬する自分もいることが分かってしまった。
「オレは何をしているんだろう?」と問いかける気持ちが、次第に増していく。強がりながら"弟"として彼を守らなきゃいけないと思う一方で、からかうことで自分を偽っていたことが、だんだんと恥ずかしくなっていった。
数日が経ち、オレはそんな自分に向き合わざるを得なくなった。ある日、部屋でトランペットを吹く七星を見て、オレは思わず声をかけた。
「お前、上手いな。他のやつには負けてねえんじゃねえの?」
彼は驚いた表情をした後、少し照れくさそうに微笑んだ。
「あ、ありがと・・・。実は僕、楽器やってるのを褒められたことないんだ」
「そうなの?」
数分間の沈黙をした後、オレは勇気を出して七星に言った。
「それ、教えてくんない?」
その瞬間、七星はさっきよりももっと驚いた表情を見せた。
七星のあの音を聞いてしまったときから、オレの頭には「トランペットをやりたい」という文字がいつも浮かんでいた。
だから、教えてって言いたかったけど、結局勇気が出ずに言えないままだった。
それを、今言えた。
「こんな僕だけどいいの?下手だよ?」
「・・・そんなん気にしなくていいよ」
オレはその日以降、学校から家に帰ってくると毎日七星に楽器を習った。
トランペット、ピアノ、ドラム・・・。
七星と吹奏楽クラブに通って、フルートも習った。
それから七星と一緒にいるのが楽しくなっていった。
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そんなこんなで4、5年のときがたち、オレは吹奏楽部に入部したというわけだ。
青春ピーコックブルー 〜吹部よ、青に染まれ!〜 迷M _りみ @mei_m_rimi
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