第十三話 宇宙店主、今地球日のシバシバ。十二月二十九日二〇二四年
年越し前に豪快に風邪を引いてしまった。嬉しい誤算。只の風邪では無くて、地球産インフルエンザ。思考回路が完全に停止し、身動きの一切も不可。一週地球間程、万年布団の中で過ごしてしまい、朦朧とした意識の中で、何故かアフリカ大陸のガーナに飛行機で旅行に行った。勿論妄想なのだが、何故行った先がガーナなのか?
早速空港に着いて、知人のガーナ人の家に向かって、一地球人歩き始める。何時の間にか、両足には安価な橙色のビニールサンダルを履いて居て、荷物は?と云うと大きなリュックだけだ。
現地の言葉などは全く分からずに、物売りやら物乞いやらが次々と登場して来る。
現地にて日本語を教える若い女性と、日本語を学ぶ生徒と云う立ち位置で恋に落ちた。だが私は生粋の日本人であり、日本語は母国語。気が付くと二人はボロボロの路線バスに乗って居て、一緒に彼女の家路に向かって居た。バスはとても古くて、サスペンションが全く効いて居らず、舗装をされて居ない悪路を進むが故に、「ボィィンボィィンっ!」バスが縦に揺れる。
彼女は一番後ろの席、私は一番前の席に座り、バスの大きな窓から見える景色を眺めて居た。そして飽きたのか?奥に座る彼女の場所に身体を移して、右隣に着席。
左隣に現地人のババアが座って居て、アジア人が珍しいのか?話し掛けられる。何やら必死に英語で過去の恋愛話を語り掛けて来て、時折り「シクシク..」涙も見せて来る。反対側に座る彼女も「ウンウン..」と真剣にババアの言って居るハナシに、耳を傾けて聞いて居る御様子。
ハナシが終わって、彼女に「折角良いハナシを聞かせて貰ったんだから、少しお金を払いなよ?」との忠告が在り、ズボンの右ポケットから紙幣を取り出して、其の中から一ドル札を抜いてババアに手渡した。
キレたのがババアの方で、
「わたしゃ、こんな安い一ドルみたいな安っぽい恋何て、して来ちゃ居ないよ!」と激怒。この私に手渡した紙幣をブン投げて来た。
隣の彼女に「もっとあげなヨォ!」と叱咤されて、嫌だったが二〇札を手渡すと、ババアの機嫌がスッカリ直り、ニッコニコ。
(若しかして俺の彼女と共犯か?)と思い、隣りに座る彼女の顔面を両手でガリガリと掻いてみた。すると皮膚がボロボロ剥がれて来て、見た事の無いアジア人女性の顔が現れて来た。
私は次の駅でバスから降りて、其処から徒歩で知人のガーナ人の家に帰ようと決心、決して辿り着く事の無い知人宅まで、一人ぼっちで歩き始めた。その後ろから例の女日本語教師も、トボトボと付いては来るが、この時には全くの恋愛感情は無い。
そこで御目目が覚めた。布団は寝汗でグッチョグチョ。
この私の出た結論は、
「偶にインフルエンザに罹って、自身の汚れた精神世界を一度、キレイに一掃させるのが吉。」
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