第八話 宇宙店主、今地球日のシバシバ。一〇月二十二日二〇二四年
ツイ二〜三地球日ホド前の事だ。
この宇宙店主の荒屋からチラ見して、右斜め前。道路を挟んだ向かい側の辺り。と或る一軒家の前に“駐車禁止”の看板を見た。其の駐車禁止面積は、大体三台分の四輪車ホド。
この看板は勿論タダでは無く、市の道路課にお金を支払って権利を申請するモノ。飲食店の“予約席”みたいなモンね。
この駐車禁止の目的は、引っ越しで在ったり、家をブッ壊して建て直しをしたりする時に使われる。看板を無視して、勝手に四輪車を駐車させるや否や、法律の名の下、速攻でレッカーされる。問答無用。
そしてコノ一軒家に関しては、俄然“駐車禁止”の要望が多い。家の前に、頻繁に看板を見掛ける。此方の一家は、数地球年前にコノ一軒家を購入してからと云うモノ、家の部分的な建て替え等に余念が無い。
可能な限り、資金や情熱を家に費やして、短い地球人人生を豊かに過ごしたい、と云う気持ちは良く分かる。
「が、然しだ..」
「円に換算して、四二〇〇〇〇〇〇〇円也。」
この一軒家の実質売却価格。
勿論事実。
以前コノ一軒家には、画家の糞ババアが独りで住んで居た。絵を売って生計を立てて居たから、正真正銘の職業画家だ。他人に対して余計で過剰な警戒心を全く持たない、宇宙店主とは非常に気が合う、ヒッピーでハッピーな糞ババアだった。
其の糞ババアが地球人人生を全うした後、彼女の遺族の奴等が、当時ボロボロだった一軒家を専門業者を雇って、完璧にブッ壊した後に、再度建て直し。そして其の完成した新しい一軒家を購入した、新しい御近所さんが現在の彼等。
一家は犬を二頭飼って居る。宇宙店主が保健所などでは見た事が無い、大きくて痩せて居る薄っぺらい犬。正面から見ると、両手で南北の方向に抱えたヒラメの如く、非常に身体が薄い。
「カステラを横に斬るんじゃ無くて、縦に斬って立たせた感じ?」
恐らく高価な犬なので在ろう。犬種を調べようとも思わない。別に欲しく無いから。
一家はチャンと彼等の朝昼晩の散歩を怠っておらず、愛情タップリ可愛がって居るみたいなので、保護犬猫専門の宇宙店主からしても、バッチ、グゥ。血統書付きだろうが、生命が尽きる迄、責任を持って面倒を見てくれる地球人には全く文句は無い。
彼等一家は、宇宙店主と路上で会ったら、必ず向こうから爽やかに挨拶をしてくれる、超善人。其の際、宇宙店主も必ず挨拶を返すのだが、彼等の名前は付けない。
覚えて居ないから。何故か覚えられないからだ。
実は過去に数回ホド名前を聞いた事が在ったが、聞いた瞬間、光速の速さで宇宙店主の深層世界の彼方へと消えた、彼等の名前。
要するにヤッピーな地球人人種なのだ。ヒッピーな宇宙店主とは水と油。合わない。
興味の無い事に関してはコノ宇宙店主、一〇割の確率で其の情報源を瞬殺する。興味の無い地球人に興味を抱く事は全く興味が無い。接点が無い地球人人種と一緒に費やす地球時間ほど、勿体無いモノは無い。
四二〇〇〇〇〇〇〇円強の新築の一軒家を購入したにも関わらず、更にお金を費やしては、家を理想的な物に仕上げて行くと云う創造性の無さ。
正に尊敬に値する。
そして彼等は金持ちだ。
金持ちの思考回路が全く理解出来ない。
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