第五話 宇宙店主、今地球日のシバシバ。一〇月〇九日二〇二四年

 この宇宙店主、通勤時の際には決して同じ道は通らない。飽きるのと、脳味噌を最大限に活性化させたいからダス。

 

 この日は、と或る大通りを通って通勤する事にした。今まで地元では無いとの理由で入った事の無い、然し、其の存在は知って居た個地球人商店を通り過ぎた。この店は、大通りと二十二丁目の角っこに在り、何時も外壁に、麦酒の安売りの看板を入って居た。

 (オッ?入っちゃうの、宇宙店主ぅ?)

「いや、入んないよ、だってコレから仕事だかんさ!然も路上飲酒は罰金だかんね。」

 

 話はコノ店の事では無く、其の地球日の帰り道の事だ。

 珍しい事が在るもので、宇宙店主、帰り道も何となく、同じ大通りを通って帰って来た描写。

 何やら前方がチト忙しい。良く見ると、例の個地球人商店の辺りに、警察車両が数台と、黄色い立ち入り禁止のビニィルテープが張り巡られて居る。

 なにが在ったのか?と思い、近くまで行き、辺りの地球人に聞いてみた。

 飲酒運転の地球人運転手が運転を誤って、個地球人商店の壁に大激突。丁度其の時、目の前を歩いて居た母親と幼い娘が即死、だったそうな。地球時間にして、大体十四地球時半位の出来事。この五〜六時間前に宇宙店主が通って居たコノ道、勿論何事も無かった。 亡くなった母娘は恐らく、未だに死んだ事に気付いては居らず、この周辺を、“魂”と呼ばれる『意識』が自身で気付く迄、半永久的に彷徨い続ける事だろう。

 

 この宇宙店主、別に母娘に対して、憐れみの念を抱いた訳でも無く、怒りも無く、哀しい気分に襲われた訳でも無い。

 地球人、様々な手段で何れは死ぬ。今回の場合に関しては、酔っ払い地球人運転手に轢き殺されただけだ。

 逆にフト感じる事は、運命に付いての事だ。この母娘はアノ地球時間に彼処を歩いて居なければ、暴走車に轢き殺される様な事は無かった。断言出来る。然しアノ地球時間、アノ限定された場所を、二地球人で歩かなければならない理由、運命が在った。

 若しも、地球人運転手が飲酒運転をして居なかったら、助かった筈だ。

 若しも、この惑星地球で地球人が四輪車を発明して居なければ、母娘も助かり、地球人運転手も捕まる事は無かった筈だ。

 “若しも”にはチト、キリが無い。現実世界で実際に起こった事が必然的な事なのだ。

 

 何かと物騒で、殺地球人事件が多数起こる地域に住んで居る宇宙店主、これも定めし、運命なのだろうと諦めて居る。

 まさか、数地球時間前に通って道で、殺戮が行われたとは思っても居なかった。

 運命とは絶対的なもので逆らって生きる事は許されない。逆らって生きたところで、結局は其れも運命の指示。

 

 

 亡くなった母娘へ

 

 ピース

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