異世界に飛ばされた俺は霊感が強いだけ!

夜間救急事務受付

第一章

第1話[何処ココ何コレ!]

樹々の隙間から溢れる陽が差す深い森の中に、空を探す惚けた顔のサラリーマンが立っていた。


場違いなスーツ姿は大きそうだった。


何処ここ……


黒髪の少年は、空を見上げたまま服に付いているポケットを全て弄り、邪魔な長い裾を捲る。


何だコレ何だコレ何だコレ! 何でこんな所に! あれスマホも財布も無い! マジでどうなってるんだ!


忙しなくパタパタとポケットを服の上から叩き、上着を脱ぎ出す少年。


お目当ての物は何も持っていなかった。


鳥の鳴き声、風に揺れる葉音。


時間と思考が止まった様に立ちすくんでいた。


意味が分からん! 面接官と意気投合し、盛り上がっていたはずなのに……


少年の名前は[大角豆 士郎](ささぎ しろう) 37歳。


長く勤めていた会社に嫌気がさし、勢いで辞めてしまったのが5か月前。


自堕落な生活から抜け出そうと今日、7社目となると会社の面接に来ていた。


そのはずだった……





「えっと… だいかくまめさん?」


「あ、ささぎです! 大角豆って読みます」


「失礼しました。大角豆さんは5番面接室へお願いします」


「はい!」


変ね、5番なんてあったかしら……



今更辞めた事を後悔しながらも、あまり条件は良く無いが、藁にもすがる思いでこの会社の面接に来ていた士郎。


着慣れたスーツで颯爽とノックし部屋へと入るや頭を下げる。


「大角豆士郎です。よろしくお願いします」


顔を上げると面接官はひとり。


50前後のやる気のなさそうな男が履歴書を読んでいた。


「珍しい苗字だね〜 まぁ座って」


ハイっと元気な返事をして、古そうなパイプ椅子に座るフレッシュ感は無い士郎。


広い会議室、2人っきりの空間に緊張が走る。


「ふむふむ。まぁ経歴は…… この際いっか。趣味読書ってありきたりだね〜 で、どんなの読むの?」


「はい! その…ラノベが主に……」


「おっ異世界物とか?」


「ええ、まぁ…」


「面白いよね〜 俺も好きなのよ!」


見た目おっさんの意外な趣味に驚く士郎。


「ほんとココはコレのおかげで理解が早くて大助かりよ!」


「えっ! はぁ…」


「やっぱ剣と魔法でしょ!」


「そ、そうですね。自分も魔法を使ってみたいですね。冒険者とかなって!」


「男の子はそうでなきゃね〜 じゃ説明とかいっか!」


「はい?」


「家族もいないし、お金もないし! ただ生きてるだけなんて嫌でしょ?」


「あれ、履歴書にそんな事までは書いて…」


「良いから良いから! 新たな人生楽しんで来なよ!」


「えっと……」


「じゃ、がんば!」


理解出来ない士郎が聞き返そうとすると、皺の多い笑顔の男が白く消えて行く。


真っ白な霧に包まれた様だった。




そしてコレだよ!


何処だよココは!


森の中って、マジで異世界に飛ばされたのか俺!


慌てながらも周りを見渡す士郎。


高い樹々の根元の苔が広がっている世界で誰かを探す。


おいおい、ホントに説明も無しかい……


肩を落とす士郎が次に動き出したのは、30分程の時間を超えた頃であった。




「ステータス……」


士郎が呟いた次の瞬間。


目の前にゲームでよく見る画面が空中に現れる!


[言うと思ったよw  ゲームじゃないんだから、現実の異世界よココはw

まぁ可哀想だし初回だけ見せてあげるね! 


人族 17歳 男

HP 体力次第

MP そこそこある方!

STR 鍛えたら上がる

AGI 走り込め!

DEX 経験が物を言う!

VIT 防具頼り

INT 自慢していいよ!


固有スキル 霊感


じゃ南に行けば村があるから頑張ってね異世界LIFE!]


……………


何コレ……






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