君を愛してる。

斗花

第1話

卒業式を三日後に控えた日曜。

俺達はwaveでライブの準備をする。



「あのー、先輩?

何で俺の制服は学ランなんですか……?」


「似合うからに決まってんだろ」



フクのまじまじとした質問に俺が答える。



「皆はブレザーなのに、俺だけ変でしょ!」


「フクに学ラン着せろって言ったのは蘭だぞ」



何やら怒っていたが、彼女の名前を出したらため息をつき着替えた。


……相変わらず、優しいなぁ。

そんなんだからチューしかできねーんだろ。



心の中でそう思ったが、口には出さずに俺も制服に着替えた。



全バンで優勝してから、もう一ヶ月経った。



俺達は今日、卒業ライブというタイトルで制服を着て歌う。



提案したのは大澤。



「先輩が無事留年しなかったので、今回のライブは卒業ライブとしょうして曲もその方向に統一しませんか?」



大澤は何だかんだ、すげーアイデアマンだ。



「じゃあ、校歌もアレンジしてお洒落に歌いましょう!」



大澤の横でスズが言い、ピアノで即興で校歌をアレンジしていた。


もちろんフクに譜面を起こさせ今日は演奏する。



「やっぱり、この眼鏡、譜面見にくいです!」



カクがグルグルながり勉眼鏡をかけながら俺に言ってきた。


「大丈夫だって!面白いぞ!」


ただ制服着るだけじゃつまんねーからな。


一応、怪しい店で制服コスプレを購入し、みんな桐高以外のを着てる。


あ、俺は桐高のだけど。


やっぱり一応、俺のための卒業ライブだからな!


大澤は身長が高すぎで探すのがすげー大変だった。


だから、裾もピチピチ。


「これ……変でしょ……?

第一、何で俺だけ夏服なんですか?!」


「仕方ねーだろ。

ブレザーはどれもサイズがなかったんだから。


ズボン、見えなくて本当良かったなぁ。

ドラムの特権だろ!」



まだぶつぶつ言っていたが、フクの学ランを見たら「ま、あれよりマシだな」と、我にかえった。



フクの学ランはヤンキーが着るような、いわゆる特効服。


髪の色がやたら明るくて、おまけに今日は美波がワックスを散々塗りたぐったおかげで超、チャラそう。



「俺、もともと見た目チャラく見られるのに……。


こんなの着てたらガチすぎますよ!」


そうは言いつつも用意しておいたサングラスをバッチリ、つける。



……なんだ、意外とノリノリじゃねーか。



男子が着替え終わると美波とスズが入ってくる。



「……どーですか?」



スズが俺を見ながら聞く。


「スズちゃん可愛い!」


俺より先にカクが立ち上がって言った。


「奇跡だな、それ」


大澤もお茶を飲みながら、ため息混じりに言った。



俺は立ち上がりスズの横に立つ。



「可愛いなぁ、すず。似合う、似合う」



俺が肩に腕を回すと少し恥ずかしそうにする。


「ほんとですか?」


上目遣いで聞いてきた。



スズの制服を買うときに隣にいた淳士が「坂本はコスプレ超ハマるんで」

と、セーラー服を薦めてきて、一回殺してやろうかと本気で淳士に殺気を覚えたが結局、買って着せてる俺。



「スズは何でも似合う」


「淳士くんに感謝だねー」


美波がそんな俺を見て嫌味ったらしく言うが、そんな声は残念ながら俺の耳には届かない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る