甘い時間の作りかた
斗花
第1話
俺の話を聞いて前の席に座っているあっちゃんが面倒くさそうに聞き返す。
「要するに何が言いたいんだよ?」
「要するに、のろけたい」
俺の返事を聞いて大きなため息をついた。
「俺がその日、何をしてたか知ってるか?」
「野上先輩と伊達先輩の引越しの手伝い」
「分かってるならそういう話するな!」
あっちゃんこと和泉淳士はそうキレながらも俺の方に体を向けてくれる。
「で?なんだって?」
「日曜日に俺が家で一人だって言ったら昼ご飯を作ってくれたんだよ。
結婚してるみたいじゃない?」
「家にいたなら引越し手伝えよ!」
「野上先輩は『二人で楽しめ』って言ってくれたからさ」
「俺には強制参加だって言ってきたくせに……」
あっちゃんはブツブツ呟いてたがそんなのは知ったこっちゃない。
今は俺と俺の彼女、本宮詩織のラブラブっぷりを聞いてほしいわけだ。
「つーか本宮も、よくお前の束縛に堪えてるよな」
ノートをめくりながら感心したように言う。
「良い女だよなぁ」
詩織のことを見るあっちゃんの顔をノートで叩いた。
「いって!何すんだよ?!」
「詩織のこと見るなよ」
「はぁ?!
お前、言ってることめちゃくちゃだぞ!」
「しおり!」
あっちゃんの言葉を無視して俺は詩織に話しかけた。
俺が話しかけると首を斜めに傾げて眼鏡の奥の黒目で俺をジッと捉える。
「どうしたの?」
「今日、部活休みなんだ。一緒に帰らない?」
俺が聞くと詩織は優しく微笑み頷いた。
その笑顔につられて俺の方も笑顔になる。
俺の彼女の本宮詩織は調理部の部長で、銀フレームの眼鏡が似合う、黒髪の美人だ。
今ハヤリの黒縁じゃない銀フレな所とかもすごい良い大和撫子のような美女。
ちなみに俺の名前は大澤和政。
普通の高校生です。
「おい、大澤。見とれてんのも良いけどな。
次の授業、選択だぞ。お前、移動だろ」
あっちゃんに言われて俺は慌てて立ち上がる。
「そうだった。あっちゃん、待って」
大急ぎでロッカーを開けると中には一枚の手紙が。
「またラブレターかよ?!」
後ろから呆れたようにあっちゃんが声を出す。
「なんでお前がモテるかねぇ」
俺は頂いたラブレターを読まずに教科書に挟む。
「読まねぇのかよ」
「うん、帰って捨てる」
学校で捨てたらくれた人に失礼だ、と以前あっちゃんに教わった。
「だって俺には詩織がいるし」
あっちゃんはその言葉をシカトして俺の教科書を持ち「ほら、行くぞ」と、教室を出ていく。
詩織と付き合い始めてからもう11ヶ月以上経つけど、俺の気持ちは全然冷めない。
むしろどんどん好きになってく。
そんな俺のことを友達はいつも重いって言うけど、好きなんだからしょうがない。
「今日も大澤は本宮に作ってもらってんの?」
お弁当の時間にあっちゃんに言われる。
「うん」
「美味そうだよな」
秀ちゃんからも羨ましそうに言われた。
そしてよっちゃんのお弁当を見て笑いながら言う。
「なんで皆川は本宮のレシピなのに、
「まったくだ」
よっちゃんはため息をつき、その弁当を食べた。
「お前ら、ホント絵に描いたようなおしどりカップルだよなあ」
あっちゃんの言葉を否定せず綺麗な黄色い卵焼きを食べる。
おしどりカップルだってさ。
すごい嬉しい。
「大澤の束縛に堪えるなんてガチですごいよな」
購買のコロッケパンを食べながら秀ちゃんが言う。
「秀ちゃんには言われたくない」
「だってそうだろ?
お前の独占欲、ハンパないぞ」
それは確かに否めなかった。
俺は詩織が他の男子と話したり、他の男子とメールしたり、他の男子と接触したらすごい嫌な気持ちになる。
だけどそもそも詩織は他の男子と関わらないし、そんな機会は滅多にないから怒ったこともない。
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