第2話

野上とのデートの二日後、私は伊達朝長の彼女の山本桜とファミレスにいた。



「で、引越し手伝うと」


「だってー……。

なんか悔しかったんだもん……」



私の答えにため息をつく桜。



「そんな面倒なこと、何で引き受けたかねぇ……」



ただいま、桜さんから説教を受けてます。



「やりたくないなら手伝っても邪魔でしょ」



あのデートの帰りに野上に「日曜に引っ越す」って言われて「大変そうだねぇ」と答えた。



「流星と後輩も手伝ってくれるから」


無邪気な笑顔で言われて、私はその流星という言葉にまた、変に嫉妬してしまった。



「私も手伝う!」



面倒だなー、と思ってたのに率先してそう口にしてしまった。




「だから、桜!一緒に手伝いに行こ?」



パフェを食べる桜に手を合わせて頼む。



「嫌だよ、面倒くさい」


「桜の彼氏の引越しでもあるんだよ?!」



生クリームをスプーンですくい取り綺麗に食べた。


「そんな力仕事、伊達は頼んでこないし」


「野上だって頼んできた訳じゃないもん!」



私のパンケーキはなかなか、こない。



「だいたい桜は良いわけ?!

野上と伊達、一緒に暮らすんだよ?!


ますます仲良くなっちゃうんだよ?!」



私のことを呆れたように見てパフェを食べ進める。


「知らない奴と暮らされたり遠くに行っちゃうよりも全然、良くない?」



お店の人がパンケーキを持ってきた。

私にフォークとナイフを渡しながら桜が話を進める。


「だいたいさぁ、あの三人が仲良いのなんて今に始まったことじゃないし、野上と伊達なんて中学からズット一緒なんだよ?


勝てる訳ないじゃん」


そして私の目を見た。


「そもそも張り合う相手じゃないし。

性別も立場も違うじゃん」



桜の言うことが最も過ぎて私は無言でパンケーキを切る。



「……まぁ、寂しくなるってのは若干、分かるけどね」



「私ばっかり野上のこと好きみたい」



私の言葉に桜は手を止めた。



「二人でいても私ばっかり好きみたいで悔しいんだもん」



私は切ったパンケーキを口に入れていく。



「伊達はなんだかんだ、すごいヤキモチ妬きじゃん?


流星はもう彼女ラブが目に見えんじゃん?」


残っていたミルクティーを飲み干した。



「野上はヤキモチも妬かないし、ドキドキしてくれたりも全くしないんだよ?!」



「そんなん言ったら私、手も繋いでないけど」



「だから伊達はドキドキしてんじゃん!」



黙る桜に構わず私は続ける。



「あいつにとって私は何なんだよー!」



隣の女の人がまじまじと私を見た。



「美波、声大きい」



桜に宥められ私は一旦、落ち着く。



「なに?要するに野上に妬かれたいの?」



桜は面白そうに私を見る。



「そうじゃなくって、」



近くにあった水を飲む。



「愛されてることを身をもって感じたい」



ふーんと桜は何かを考え、より楽しそうに言う。



「あいつのこと試してみる?」



そして桜は悪戯に笑った。

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