第5話

そんなドキドキを無理矢理、押し殺す毎日。



「あっ!ゆきくん!プリクラ撮ろう?」



蘭ちゃんに強引に腕を引かれプリクラ機の中に入る。

彼女とプリクラなんて中学生以来だなぁ……。



俺が記憶を辿りお金を入れて画面をタッチすると、蘭ちゃんが俺の指を触る。



「蘭ちゃんがやるよね?」


「ううん、そうじゃなくて」



小さく首を振った。

機械が肌の明るさ選択の画面になる。



「ゆきくん、もしかして女の子とプリクラ撮るの初めてじゃないの?」



どうして、君はそんなに泣きそうな顔をしてるんだろうか。



「えっと……」



何て答えるべきか分からず戸惑っていると、選択画面がタイムオーバーで、フレーム、背景選択になる。



「ゆきくんは映画を女の子と見るのも、初めてじゃないの?」



さっきまであんなに浮かれていたのに、あっという間に泣きそうになる。



「ゆきくんにとって私はいつも初めてじゃない」



その言葉には何も、返す言葉はない。


フレームも背景も自動的に決まってしまい。



「私ね、ゆきくんの初めてになりたい」



「あのね、蘭ちゃん。

順番とかは全然、関係ないから」



3、2、1、の音が鳴り蘭ちゃんが俺にキスをした。



さすがの俺もビックリする。



「……蘭ちゃん?」



「チュープリは初めてでしょ!」




ぶっとんでるな、この子。



「これ……、写真に残るんだよ?」


「分かってるよ!撮ってる友達、いるもん」



二枚目は何もなかったようにピースする君に年齢の差を若干感じた。



「ゆきくん、三枚目になっちゃうよ?」



平然とする君になんだか少し悔しくなって、あぁ、俺もガキだな、と少しだけ感じながらも君を引き寄せて笑顔を作って、ピースする。


もう一度背景、フレーム選択になり蘭ちゃんが丁寧に選ぶ。



3、2、1が聞こえて俺も蘭ちゃんにキスをした。



ビックリ顔の蘭ちゃん。


「……友達も撮ってるんでしょ?」


俺は余裕をかまして笑ってみせたけど。



こんな密室でキスなんてするカップル、正直すごいと思う。



よくそんな気になるなー……。



だけど、君のセーラー服がいつも俺にブレーキをかけるんだ。





せめて君の制服が変わるまで。



それまでは紳士的で優しくて、大人な俺でいようと思います。








→おまけ

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