1. "全部教えてやりたい"

p.2

8階建てアパートの一室。


男はリビングのテーブルに論文を広げ、

眼鏡越しにパソコンのデータを目で追っていた。


ふと画面下の時計を見ると、

作業を始めてから3時間が経過していた。



ずっとブルーライトを浴びっぱなし。

眼鏡を横に置き、目頭を指で押さえた。


職場でもパソコン、家でもパソコン。


首をぐるりと回すと、

バキバキっと人体とは思えない音が鳴った。



ため息をついて前方を見ると、


「ん?」


さっきまでいたはずの姿が見えない。



シンプルに紺と白で揃えられた家具たち。


自分でも気に入っている

テレビの前の紺のソファに

先程まで座っていた姿を探そうとした矢先、



背後からほろ苦い香りが漂ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る