比乃子★えくすぷろーじょん! ~悪の大幹部でもアイドルになれますか?~

黒巻雷鳴

新しい比乃子、爆誕!

第0話 戦場にて

 霧がかった薄日射す森の湿地帯をゆっくりと進む。

 迷彩柄の戦闘服を着た屈強な男たち数名が突撃銃アサルトライフル・M16の銃口と共に、周囲を警戒しつつ息も潜めて前進する。

 おれたち緊急展開部隊は、敵の待ち伏せにあってその数を減らし、いまの戦力は半分にも満たない。それもすべて、金メダル級のクソみたいなこの極秘任務ミッションのせいだ。

 沼を取り囲む密林のどこかで、鳥の鳴き声が聞こえる。

 前方から生暖かい風が不意に吹き、汗ばむ頬をそっと撫でて消えた。


「ケッ! どうせなら、金髪ブロンド姉ちゃんのキッスにしてくれよ」


 部隊の後方でガトリング砲を担ぐジャクソン伍長が、褐色の肌に汗玉をいくつも浮かばせて誰となく喋りかける。


「黙ってろ、伍長。おまえの口臭で全員の感覚が鈍る。それにな、その無駄口がオレの頭痛も呼ぶんだよチョコレートちゃん・・・・・・・・・


 スコッチの薫りが漂うアレグザンダー少佐の叱責と時を同じくして、風下から何発もの発砲音が鳴り響いた。


 ──畜生どもめ!


 瞬時に、他の隊員たちも戦闘態勢をとる。

 やられっぱなしでたまるかと、おれたちのフラストレーションが一気に爆発した!


クソったれえええええええええッ!」


 ジャクソン伍長が銃声に振り返りながら、担いでいたガトリング砲を密林に向けてブッ放す。ヤツの相棒が毎分四〇〇〇発の火を吹き、周囲に生い茂る草木や苔まみれの倒木が、見るも無惨にその姿を変えていった。

 だが、それでも奇襲攻撃は続く。

 見えない敵兵のプレッシャーと銃弾の雨に抗いながら、おれたちは戦う。

 祖国のため……家族のため……愛する人のため……最後まで生き残るために。


「うおおおおぉぉおおおおおぉぉぉッッッ‼」


 曇天の空までのびるジャクソン伍長の咆哮。


 そして、様々な角度から聞こえてくる銃声が織り成す狂気の交響曲シンフォニア──。


 霧がかる密林の湿地帯は、まさに修羅場と化していた。




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