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あの人影は恐らく犯人で、その人は上へ行った。もしも僕が寝ていたのなら、僕も殺されていたかもしれない。


心臓は恐怖のあまり騒ぎ出す。


「…助けて、黒也。」


コツコツコツ…足音がする。2階の部屋を見て1階へ戻って来たんだ。見つかれば殺される。隠れなきゃ!頭では分かっていても、身体が恐怖で硬直こうちょく


コツコツコツ…近付く足音に怯え、僕はまぶたを閉じ耳をふさいだ。その時だった、誰かが後ろから僕の口を塞いだのは。


「…っ⁈」


「静かに。俺だ、落ち着け。」


聞き慣れた低い声に、僕は少しホッとした。


「逃げるぞ、動けるか?」


僕はうなずいて、黒也と一緒に逃げたんだ。


真夜中の森は暗く、土砂降りの雨が僕らの身体を冷やしていく。


2人は走った。普段なら固く閉ざされている門。けれども、この日は開いていたのだ。


「はぁはぁ。ねぇ、一体何が起きてるの?」


初めて森の外に出た。走り疲れて、僕はひざに手をつき息を整え、黒也に問いかけた。


「分からない。とりあえず今は、逃げる事が先だ。」


そう言って黒也は僕の足を見る。

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