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どうしてそう言い切れるの?


「もしバレたら、僕らどうなっちゃうのかな?出会う前に戻るの?嫌だよ、そんなの。」


涙があふれた。


「バレない、大丈夫だ。」


「もしバレたら?」


「バレない。大丈夫って言ったろ?」


「でも…。」


黒也は不安じゃないの?どうして僕だけがこんなにも不安にならなくちゃいけないの?


「俺を信じろ。」


「信じてるよ。でも、もし…。」


「"もし"も、"でも"もない。大丈夫だ。」


「黒也ばっかりずるいよ。黒也は怖くないの?僕は、離れ離れになっちゃったらって考えるだけで、こんなに怖いのに。黒也は違うんだ?」


似た者同士の僕らは、互いに分かり合えていたはずなのに。


この時の僕には、黒也の"大丈夫"に信用も納得も出来なくて、不安にただ押し潰されそうだった。


兎白とはく…「ごめん、今はひとりになりたい。」


言葉をさえぎり、僕は部屋から黒也を追い出したんだ。


黒也を追い出して数日。彼は顔を出さなかった。きっと、森の何処かに居るのだろう。けれど僕は、彼に会いに行かなかった。


しばらく会わない方がいいんだ。佐野さんに疑われてる間は…。

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