第79話魔物討伐訓練4 ヘトヘトに帰ってきたら、怒っているルードに捕まってご飯を食べられませんでした

1つ目巨人とゴブリンの群れを退治した私達だったが、

「もう少し、歯ごたえがないと」

コンスはブツブツ言っていたが、私達にしてみればこれでもう十分だった。


まあ、大半の敵を倒したのはコンスだったけれど。


今回の魔物討伐訓練は完全にコンスにおんぶにだっこだった。


まあ、そこは反省点だった。


でも、普通、学生の前に1つ目巨人なんて出てくれば絶対に対処なんて出来ないのだ。

それはゴブリンの群れにしても同じだ。


学生10名では絶対に対処できなかったと思う。


コンスがいたから対処できただけだった。


「魔物討伐訓練がこんな大変なものだとは思ってもいなかったわ」

「何言っているのよ。普通は学生の討伐訓練にSランクの魔物の1つ目巨人なんて出てこないわよ」

ヘレナが言ってくれた。


「そうだぞ。それとゴブリンの群れもありえないぞ」

エグモントが前を警戒しながら言ってくれた。


「じゃあ、なんで出てきたのよ?」

私が聞くと


「たまたまが重なったのか?」

ベルナールが言うが、


「でも、1つ目の巨人とゴブリンが同じようなところにいるのがおかしいわよ。普通は1つ目巨人がいればその近くにゴブリンは近寄らないはずじゃない?」

ポピーが頭を傾げてくれた。


「神が強い敵を与えてほしいという私の願いを聞いてくれたんだ。きっと」

コンスが目を輝かせて言いだした。


「ふう。何とんでもないことを祈ってくれるのかな」

そのコンスを見て、ため息を付いたエグモントが首を振っていた。


私達はエグモントに大きく頷きたかった。

そんな余計なことを祈らないでほしいと。

私達はみんな心の底で思ったのだ。



その後、クラスの集合場所に遅れて私達が帰って来てからも大変だった。


なんでも、今回の討伐訓練は、2日前に騎士団が討伐してくれていたので、魔物も殆ど出なかったらしい。だから、戦った班はほとんどいなかったのだ。

小物の魔物を倒したのが3つの班とスライを1つの班が倒したくらいだった。


先生らも安心していたのに、ただ一つ、私達の班の帰りが遅いからどうしたのだろうと見に行こうかと心配していたところだったそうだ。


「な、何だと! Sランクの1つ目の巨人とゴブリンの群れが同時に襲ってきただと」

私達の報告を聞いてマルタン先生が大声で叫んでいた。


「何故すぐに救援を呼ばなかったのだ? そう言うときは呼べと言っていただろう」

マルタン先生は叱責した。


「でも、まあ、大した敵ではありませんでしたし」

平然とコンスは言い切ったが、

「そう言う問題ではないぞ。普通はそんな敵と遭遇しそうになったら逃げろと言っておいたよな」

すごい剣幕でマルタン先生が怒っているんだけど、

「まあ、先生。私がいる限り、それくらいの敵ならば相手できますら」

「しかしだな」

コンスの胸を張って言う言葉に苦虫を噛み殺したような顔でマルタン先生はコンスを睨んでいた。


まあ、簡単に退治したのだからそれ以上は文句が言えないみたいだった。


直ちに騎士団に報告が行って、近くの騎士団が飛んできた。

コンスから遭遇場所を聞いて騎士団の人たちは直ちに現地調査に向かったのだった。


それやこれやで元々戦って時間のかかった私達の班だけが帰るのが遅くなった。


帰る頃にはもう日が暮れかけていた。


私達の馬車は夕焼けの中を、帰路についたのだ。

赤くなる空がとてもきれいだった。

私は感動したのだった。


でも、感動も長くは続かなかった。

相も変わらず馬車は乗り心地が悪くて、すぐにお尻が痛くなったのだ。

でも時間が押していて、馬車は休憩も殆ど取らずに学園に帰ってくれたのだ。


初めての魔物討伐訓練で緊張もしたしお尻も痛いし、私達はコンスを除いてクタクタで学園に着いたのだ。

学園に帰ったらもう真っ暗だった。


「遅いぞ! 何があったんだ」

私達の馬車を苛立ったルードが迎えてくれた。


「1つ目巨人とゴブリンの群れを退治していたからな」

コンスが自慢して言うと。


「コンス、貴様まさか、敵と出会うまで進んだんじゃあるまいな」

「何を言っている、ルード。いくら私でもそんな無茶はしないぞ」

コンスが反論した。


「ちゃんと予定の岩で折り返してきたのか」

「うーん、少しは越えたかもしれない」

クラウが言い出した。

何も余計なことを言わなくていいのに!

馬車に乗るのに疲れ切った私はコンスをちらりと見た。


「そら見ろ。お前がむちゃしたんだろう」

決めつけてルードが言うんだけど、


「岩を越えて水魔術を使ったのはクラウだぞ」

「えっ、私?」

いきなり振られて私は驚いた。


「どういうことだ、クラウ?」

私はルードに睨みつけられたんだけど、


「えっ、ノーコンだって言われたから違うって証明するために前の方に水魔術を放ったら、そこに1つ目の巨人が隠れていて……」

「何を余計なことをしているんだよ! クラウ、どれだけ俺が心配してお前らの帰りを待っていたと思っているんだ!」

何故か私はそれからルードに延々と怒られたのだ。


ええええ! 悪いのは私なの?


怒り狂ったルードは中々止めてくれなかったのだ。

コンス達はいつの間にかいなくなるし、私はお腹が減るしで最悪だった。


当然、私は寮の食事時間にも間に合わなくて、その日は食事抜きで寝るしか無かったのだ……


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