第11話 義妹視点 修道院に行かずに誤魔化すつもりでいたら、百叩きで鉱山送りになってしまいました。

私はカミラ・オイシュタット、この男爵家の次女よ。


私は正真正銘オイシュタット男爵の娘よ。

だって髪色とか顔貌とかよくお父様に似ているもの。


お母様は酒場の女主人をやっていたのよ。

そこで飲みに来たお父様と知り合ったわけ。

お父様は自分の妻と折り合いが悪く、お母様に色々相談していたら、懇ろな関係になって、私が生まれたわけ。

お父様が当主でない間は、私の事は話せなかったみたいで、私達は貧乏な暮らしを強いられたのよ。


でも、その先妻が流行病で亡くなって、お父様が男爵家を継ぐことになったの。


あっという間に私達は男爵邸に住むことになったのよ。

今までのボロ家と違ってさすが男爵家、とても立派な建物だったわ。


でも、そこに威張った先妻の娘がいたのよ。


お母様に何か口答えしたら、怒ったお母様に引っ叩かれていたわ。

とてもいい気味よ!


3日3晩寝込んだみたい。

高々引っ叩かれたくらいで寝込むなんて本当に体が弱いのね。


まあ、その間にお母様に楯突く生意気なメイドは全部追い出したのよ。


スッキリしたわ。


そして、お母様はその生意気な子を納屋に押し込んだの。


今まで私の代わりにいい生活していたんだから、今度は交代するべきよ。

同じお父様の子なんだから、今まで私達がした苦労をすべきよ。


私は一応はその女を「お姉様」と呼んでやったわ。

形だけは……


でも、お姉様はメイド、それも最下層のメイドになったのよ。


お姉様も立場が判ったみたいで、私達には逆らわなくなったわ。

朝早くから夜遅くまで雑巾かけやら、裁縫仕事やらで、徹底的にこき使ってやったの。


少しでも私に逆らったらお母様に言いつけてやったの。

お母様に引っ叩かれる姉様を見るのも楽しかったわ。


一度なんて貴族の子弟の行く学園に行きたいとか、理由のわからないことをお父様に頼んでいたわ。

何を甘えたことを言っているのよ。


「お前は役立たずのメイドにすぎないだろう」

怒り狂ったお母様は鞭を持ち出してお姉様をビシバシ打ったわ。


その度にお姉様の顔がゆがむのがとてもおもしろかったの。


いい気味よ。今まで私達を虐げてきたんだから。

私はお姉様を見下して、虐めていた。


そんな時に私はお姉様の納屋で、お金を見つけた。

お姉様にはお金なんて一銭たりとも渡していなかったから、どこからかくすねてきたに違いないわ。

お母様に報告したらお母様の目が吊り上がったの。

これはもう、鞭打ちの刑は確実よ。


お母様はメイドにお姉様を呼びに行かせたわ。


そして、やった来た、お姉様の前でお母様がその硬貨の入った箱をぶちまけたの。


無様に拾おうとするお姉様を、

パシーンとお母様が引っ叩いたの。


さて、ここからお待ちかねの鞭打ちのショウよ

またお姉様が泣き叫ぶさまが見られるわ。

私はとても楽しみだった。


でも、それは邪魔されたのだ。

とてつもないイケメンが現れてお姉様を抱きとめた。


イケメンに抱きとめられるのが判っていたら、私が引っ叩かれれば良かったと私は思った程だ。


メイドに対しても優しいならば、男爵家の令嬢の私にはもっと優しくしてくれるに違いない。


私は一番いい服を来て自室で待機していた。


そこへしばらくしてお母様がやって来たの。

なんでも、お姉様のふりをしろという話だった。


「ええええ! あんな貧乏くさいお姉様の真似をするの?」

私は不満だった。


「あなた帝国の学園に行きたくないの?」

母の声に私は思わずそうすることに決めたのだ。

帝国の学園はこんな属国の学園に比べたら雲泥の差で、帝国のお貴族様に見初められたら、もっと良い生活が出来るのだとか。


「だから優雅に挨拶するのよ」

私は母の言うようにやったのに、そのイケメンは私を一瞬見るなり「ふざけるな」と怒り狂い出したのだ。

それはそうだろう。

私はきれいな栗色の髪なのに、お姉様は煤けた銀髪だったのだから。

容姿を知っていればすぐにバレるわよ。


私は白い目でお母様を見た。


でも、そのイケメンはお姉様がこの男爵家の跡継ぎでお父様ではないと言い出したのだ。

そんな訳はないだろうと思ったら、偉いおじさんまでそれを認めたのだ。

「そんなのあり得ないわ。そうでしょう。お父様。クラウディアはメイドとして飼い殺しにして、この男爵家は私に婿を取って継がせるって話をしていらっしゃったじゃない」

私は思わず言ってしまったのだ。でもそれは言ってはいけない話だったみたいで、私は後でしこたま怒られた。


そのイケメンはいつまでもさえないお姉様の味方だった。

最後に私を修道院送りにすると言ってきたのだ。

そんな、修道院なんて、昔の生活のほうがましだ。

ここは女の魅力でと思ってそのイケメンにせっかく抱きついてやったのに、そのイケメンは私をあろうことか引っ叩いてくれたのだ。両親にすら引っ叩かれたことがないのに!


そして、イケメンは慌ててお姉様を連れて帝国に帰っていった。



「私、修道院に入れられるの?」

私は最後の手段で、今度はそのでっぷり太った外務卿に抱きついてみたのだ。

修道院に入れられるのは嫌だった。


外務卿はほくそ笑んで

「まあ、行くふりをしていれば問題ないでしょう。二度とルード様がここにいらっしゃることはないですし」

外務卿の言葉に私は飛び上がって喜びたかった。


後はこんな目に合わせてくれたお姉様をどうするかだ。

私はもう絶対に許さないと心に決めたのだ。

お父様もお母様も今度という今度は許さないみたいだ。


「帰ってきたら娼館に売り払ってやるわ」

お母様が言ってくれた。

泣き叫んで娼館に売られていくお姉様が楽しみだわ。

私はそう思っていたのだ。


その日の夜中だ。


ダンダンダン


大きな音とともに、私は部屋に男たちに踏み込まれたのだ。

「キャーーーー」

悲鳴を上げたが、

「連れて行け」

騎士たちに縛られて広間に連行されたのだ。


「どういう事だ? 外務卿。何故、この女たちは修道院に行っていないのだ」

そこには外務卿よりも更に偉そうなおじいちゃんが立っていた。


「えっ、修道院には入らなくていいって」

「黙れ、小娘」

外務卿がそう言ってきたが、もう遅い。


「愚か者! 貴様、カッセル王国を滅ぼすつもりか?」

「滅相もございません」

おじいちゃんの剣幕に外務卿は慌てて頭を下げた。


「へ、陛下」

同じく縛られたお父様の驚いた声に私は驚いた。

陛下って、この偉そうなおじいちゃんが国王陛下ってこと?


「貴様は喋るな。このような一大事にしよってからに。衛兵、この者達を城の地下牢に連行しろ」

「えっ、嘘、そんな」

私は唖然とした。地下牢ってそれは修道院よりも酷いんじゃないの?


私は唖然とした。


こんなんだったら修道院に入ったほうが余程ましだったんじゃないの?

私は思ったが、後の祭りだった。


地下牢はジメジメしていてとても過ごしにくかった。

ご飯も本当にまずかった。

でも、そんなのはまだましだったのだ。


翌日、私はお母様と一緒に王宮の外の広場に後手に縛られたまま引き出されたのだ。


服は囚人服のボロ服だった。


「この者らは平民のくせに、オイシュタット男爵家に入り込み、次期当主に対して手を上げた。よって100叩きの刑に処して、鉱山送りとする」

役人が述べてくれた。

鉱山送りだって、そんなの嫌よ。

それなら余程修道院のほうが良いわ!


「えっ、いや、嘘よ、止めて! 許して」

私は必死に泣き叫んだのだ。でも無常にも誰も助けてくれなかったのだ。

私は抵抗しようとしたが、あっという間に地面に組み伏せられて縄で固定されてしまった。


「一つ」

パシン

「「ギャーーーー」」

私は悲鳴をあげた。めちゃくちゃ痛かった。

こんなの100回も耐えられない。


「2つ」

「「ギャーーーー」」

「3つ」

「「ギャーーーー」」

いつくまで叩かれたか、私は覚えていなかった。

気を失う度に水を被せられて起こされたのだ。

最後は意識も朦朧だった。


こんなんだったらさっさと修道院に行けば良かった。

後悔したが後の祭りだった。

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