第8話 まばゆい世界
二人で階段を駆け上がり、扉の外に出て、あまりの眩しさに目を開けていられなかった。予想よりもずっと明るい場所だ!? 横からメカニックの声がする。
「すげえな……明るすぎて目を閉じてるのに、目蓋の裏が明るいぜ。ラビット、目を開けられるか?」
「無理無理! 明るすぎてむーりー」
「だよな。少しずつ、目が光に慣れるようにするしかねえな」
「慣れるってどうやって」
目が開けていられないほどの明かりっていうのは、新鮮な体験だ。でも困る! どうしよう。どうしよう? どうすれば良い!?
「……ラビット。落ち着けよ。呼吸が荒くなってるぜ」
「それは分かっちゃいるけど、それ以外がなにも分かんないんだよ。これはやばい状況なんじゃない?」
「落ち着け。たぶん大丈夫だぜ」
「大丈夫かな?」
不安だけど、メカニックが大丈夫だと言ってくれるなら、少しだけ安心できる。こいつはいつだって頼りになるんだ。
「メカニック……僕はどうすれば良いと思う? 前向きな意見を聞きたいね」
「そんだけ話せるなら落ち着きを取り戻してきたな。良いか、下を見ながらゆっくり目を開けるんだ。急ぐなよ。少しずつ、この眩しい世界に目を慣らしていくんだぜ」
「了解、やってみる」
下を向いているのに目蓋の裏が明るい。こんなの地下世界ではあり得なかった。目を開けても大丈夫かな……大丈夫……なんだよね!? 信じるからな。メカニック。
何度もまばたきを繰り返しながら、ゆっくりと細く目を開けた。眩しい……眩しい世界に少しずつ目を慣らしていく。メカニックがアドバイスしてくれたみたいに、僕の目が光に慣れていくのを待った。
僕はその場に立ったまま、時間が経過していく。それは凄く長い間にも、ほんのわずかな間にも感じられた。ずっと来たかった場所に居るはずなのに、側には頼りがいのある友人が居るはずなのに、凄く心細かった。明かりでいっぱいの牢獄に閉じ込められているみたいで、凄く嫌な感じがしたよ。
そのうち、目が明かりに慣れてくる。床には格子模様が描かれていることに気づいた。ほおぉ。これが地上世界の床かぁ!
おそるおそる、期待しながら、ゆっくりと顔を上げた。広い。広い。どこまでも広そうな世界がそこにはあった。僕たちはこれから、どこまでも歩いていけるような気がする。ワクワクした気持ちになり、足がそわそわして、落ち着かない。
目に映るものが分からない。あの茶色い柱から緑のものが伸びているのは……ひょっとして木なのかな? じゃああれはなに? あっちのあれはなに?
そっちのあれはなに? 何も分からない!
僕たちが訪れた地上世界は、様々な未知に満ちている。恐ろしくて、ワクワクする!
さあ、どこへ行こう。
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