第27話 感情的ケツァール

 文化祭のラストを飾る後夜祭。

 様々な催しがされる中、悪趣味で、非常にタイパよく盛り上がるものが一つある。

 未成年の主張だ。

「三年間、ずっと一緒に、委員会の仕事とかしてきて。ずっと友だちとして過ごしてきて。気づいたら好きになってました」

 文化祭実行委員の証であるはっぴを着た男女。

「俺、不器用だから、うまく伝えらんないけど」

 茶髪の男子学生は、手を伸ばして、深く、頭を下げた。

「これからは恋人として、一緒にいてくれませんか」

 金髪の女子学生は、口元に手を当てて、その言葉をしっかりと、受け止めた。

「ごめんなさいっ!!友だちのままがいいですっっ!!」

 はい今日イチの盛り上がり。

 すると、裏から、大きな旗をもった、はっぴを着た人が出てきた。

 そしてその男女の前で旗を降り、観客たちに手拍子(うちの高校には、文化祭のための謎の手拍子が存在する)を促した。

 鼓膜が張り裂けそうなほどの手拍子の音。男子学生の胸が張り裂けないか心配だ。

 私はあの手拍子の練習の日々はこのためだったのかと笑顔で手を叩いた。

 こうしてモザイクがかけられたような形で、未成年の主張は幕を閉じた。


 文化祭マジックと言われているように、この文化祭の期間は、みんなが浮かれている。感情的なケツァールになるのだと、ブロッコリー先輩と話したものだ。あの男子学生は…(手拍子)。


 後夜祭が終わり明日は片付け日だ。現実に戻る。魔法は解ける。

 そんなことを一人考えていた私にはシュークリームを口に詰めておくとして。


「これスマホのロック画面にすればモテるぞ」

 ブロッコリー先輩はヘッドホン先輩のスマホのロック画面を友だちが女装した写真にすることのプレゼンしていた。

「別にモテなくていいし」

 もはや居候というより地縛霊と言った方が正しい気のする居候先輩はその呟きを聞き、笑った。

「なぜなら?」

 ヘッドホン先輩はニヤニヤしている居候先輩の方をチラッと見た。

「なぜなら~」

 ヘッドホン先輩はいまだ文化祭気分と言った感じだ。

「お前あんま調子乗んなよ」

「うぜぇぞ」

「なんで…」

 ヘッドホン先輩が理不尽な怒りに戸惑いながら、夕日は傾き、魔法のない一日がまた過ぎていった。

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