第16話
彼女を逃がそうと考えたことがなかったわけじゃない。でも結局僕には、度胸がなかった。
彼女を逃した場合の罰則は、最低でも“死“になるだろう。
あれほどの一級品を逃してしまえば僕に後などないんだ。わかってる。わかっているんだ。
でも、それでも、
「サンゴちゃん、逃げてみない?」
僕はいつも通りの声で、顔で、サンゴちゃんに言い放つ。
「.....?」
彼女はだいぶ戸惑っているようだった。
「“未来“は変わらないかもしれない。でも、最後に悪あがきをしたっていいんじゃないかな?、」
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