妹に殺されるはずが、光落ちした悪役令嬢に愛されています。

@Kisaki_0924

第1話

私がずっとずっと好きだったひとつの乙女ゲーのお話。

公爵家に生まれた主人公のヒナが自分にとって一番大きな存在だった姉を殺すところから始まり、

そこから狂い始めるヒナを支えるイケメンたちとの恋愛を繰り広げる、そんなお話。

私は主人公と同じ“日菜”という名前をしていてまるで自分がその世界に入り込めたように感じ、魅了されていった。

攻略対象達なんかじゃない。私は本当にヒナのことが心から大好きだった。

ヒナになれなくてもヒナの近くにいてヒナと共に生活をしたい。そう、思っていた。


甘い香りが辺りに漂っている。

まるで、ヒナが大好きな薔薇のように甘ったるい香り。


「んぅ.........。」


私は寝返りを軽くうつ。ふかふかのベット。そして甘い香りが心地よく、私はそのまま夢の世界へと引っ張られていった。


「お姉様ーーーーー!」


元気のいい声が頭に響く。私に妹などいない。だけどなぜか自分が呼ばれているような気がした。

私はふかふかで心地のよいベットから名残惜しそうに起き上がった。


「あ、お姉様おきたぁ!」


無邪気な声が左の方からした。

艶々でさらさらな黒髪と、乙女ゲーの世界線、シェルティア公爵家特有の紫色と紅色が混ざりあったような美しい色の瞳をした少女がいた。

乙女ゲーで何度も見たからわかる。これはシェルティア家の瞳だ。


「お姉様ぁ?ヒナずっと待ってたんですの!一緒に遊びましょー?」


その少女は自分のことをヒナと名乗る.......。


「えっと、ヒナ、?私の名前ってもしかして“エルジェ”かしら.....?」


ヒナはキョトンとした顔でかるか答える。


「お姉様、何を仰ってますの?お姉様の名前はエルジェでしょう?生まれたときからずうっと、」


このヒナは私が愛してやまないヒナでかわりない。

そして私は、ヒナに殺される運命を背負ったヒナの姉、エルジェになったらしい。

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