キミに捧ぐ、“Say Goodbye”

第1話

「雨かよ…」

怒涛の一週間を終え、今週も苦手な電車通勤地獄に耐え抜いたというのに。

まるで何かの仕打ちみたいなタイミングで最寄り駅から自宅に向かおうとした途端に降り出した大粒の雨に肩を落とす。

雨は気が滅入るから嫌いだ。

まぁ、好きな人なんて稀だろうけど。

雨空を仰ぎながら、どうしようかと考えてみても答えは一つしか浮かばない。

この一年、似たような状況に何度なったことか。

家に帰ればコンビニで買ったビニール傘が大量に埃を被っている。

つまり、もう傘は必要ないわけだ。

これ以上増えたら邪魔なだけだから、濡れて帰るという選択肢しかない。

「帰ろ…」

ずぶ濡れになる覚悟をして、駅から一歩外に出る。

「おーい、コウちゃーん！傘持って来たよ～」

その瞬間目に入ったのは、水を蹴るように向こうの方から走ってくる一人の女性だった。