花の名前は。

ゆ〜 @WGS所属

Flower's name is.

「僕と、付き合ってください……!」


君から発せられたその一言は、

ずっと待っていた言葉のはずなのに、

驚きが隠せなくて、でも、とっても嬉しかった。


「うん、もちろんっ!」


小さな一輪の向日葵ヒマワリを私にくれた。


「あ、あのね。」


恥ずかしそうにおどおどしながら教えてくれた花言葉。

『憧れ』と『情熱』、一輪だと『一目惚れ』。


そして、


「『貴方だけを見つめる』っていう意味もあるんだよ……」


ちょっと奥手の彼らしい伝え方だった。

聞いたとき私はどんな顔してただろうか。

眩しい太陽の光が私の顔を見えにくくしてくれてれば良いな。


その小さな一輪は、

ぽっと私の心に小さな明かりを灯した。


「てゆーか、これから神社行くじゃんw

なんでタイミング今なのww」

「あ、確かにそうだな!?」


気づいた途端、緊張の糸がぷつっと切れた。


「そういえば、なんで御朱印を集めてるんだっけ?聞いたことある?」

「よくぞ聞いてくれた!!」

「うんw」

「それはなぁ、死後に極楽への繋がり、いわゆる『あの世のパスポート』になるってどっかの記事で読んだから!!」

「辞めて欲しいなぁ〜

もう死後のこと考えてんの?w」


別にそんなに深い意味もないけれど言ってみたかった。


「だってさ、『備えあれば憂いなし』だよ!」





「おみやげ〜……

って言っても道端に咲いてた花w」

「なにそれww

でもありがとう。この花なに?」


貴方が教えてくれた1つ目の花だった。


露草ツユクサだよ」


少し私の顔を伺っているような気がした。

葉にストライプのように斑が入っていた。

大きめのマグカップに水を張り、茎を斜めに切って入れてあげる。


「そういえばね!男の子は女の子に花の名前を教わると、その花を見るたびにその人のことを思い出すんだって〜」

「いきなりどうしたの?」

「ん?私も彼くんのこと思い出すのかなって思ってさ〜」


カップを窓の縁に置きながら話す。

雲の流れが速くて、今にも雨が降りそうだ。


「そうだね、思い出してくれるといいかも。」





それから3年時が流れた。

貴方とはもう会ってない。


貴方がくれた向日葵、くしちゃったな。


別れ際、貴方がくれた金盞花キンセンカ

2つ目の花。

これも君に教えてもらって初めて知った花だった。


花言葉は。


「『変身』と『別れの寂しさ』だっけな……」


露草のあの時から、貴方は私をふろうとしていたんだよね。

言い出せないから花言葉で。

でも私はその花の名前すらも知らなくてさ。


君からふっておいて、『別れの寂しさ』ってなんだよ。

最後まで私に情けをかけるんだね。

優しい君だから。


あぁ。

自分、馬鹿みたい。


この時期に散歩なんてしたのが馬鹿だった。


露草は道端に咲いている。

端っこで申し訳無さそうに、静かに咲いている。


なんで、なんでだろう。

あの花を見かけるたび、あの思い出が、感情が蘇る。


「……っ。あーあ、女の子も、、そうみたいだなぁ……」


大粒の雨が葉を揺らした。


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