第48話 詩が生み出す新たな出会い
全国詩のフェスティバルの成功からしばらくが経ち、千草と香織は詩を通じたつながりがさらに広がっていることを日々感じていた。フェスティバルを通じて、詩が多くの人々にとって心の支えとなり、絆を生む力となったことに二人は感謝の気持ちでいっぱいだった。
ある日、千草はフェスティバルの後に多くの手紙やメールをもらったことを思い出し、いくつかを読み返していた。そこにはフェスティバルに参加した人々からの感謝や感動、そして詩を書くことで心が救われたという言葉が綴られていた。
「千草ちゃん、見て。こんなメッセージが届いてるよ!」
香織が新しく届いたメッセージを手にして嬉しそうに声を上げた。
「詩を書くことを通じて、心が癒されたって書いてあるね…本当に詩には不思議な力があるんだ」
千草はメッセージを読みながら、胸が温かくなるのを感じた。
その中の一通には、フェスティバルに参加できなかったが「詩の輪」を通じて詩に触れ、人生が変わったという女性からの手紙があった。手紙には、彼女がこれまで感じてきた孤独や不安を詩を書くことで解き放ち、新しい一歩を踏み出すことができたと綴られていた。
「詩を通じて誰かが新しい道を見つけてくれたなんて、本当に素敵だね」
香織がそう呟くと、千草もその手紙を読みながら深く頷いた。
「私たちの詩の活動が、こうして誰かの生きる力になれていることに感動するよ。これからも、もっと多くの人に詩を届けたい」
二人は、その女性に直接会って話をしてみたいという気持ちが湧き、彼女の住所に手紙を送ることにした。手紙には、詩が彼女の心にどのような影響を与えたのかを聞かせてほしいという気持ちと、もし可能であれば会って話をしたいという願いが込められていた。
数日後、その女性から返信が届いた。彼女の名前は美咲で、心からの感謝が詰まった手紙には、二人の招待を喜んで受けるという内容が書かれていた。
そして、千草と香織は美咲と会うために約束の場所へと向かった。緊張しながら待っていると、少し緊張した表情でやってきた女性が二人に微笑みかけた。
「初めまして、美咲です。お会いできて嬉しいです」
美咲が少し照れくさそうに話しかけると、千草と香織も自然に微笑み返した。
「こちらこそ、会ってくれてありがとう。手紙を読んで、美咲さんが詩を通じてどんなことを感じたのか、ぜひ聞いてみたくて」
千草は美咲にそう話しかけ、三人はゆっくりと会話を始めた。
美咲は、詩を通じて少しずつ心を解きほぐしていく過程で、自分自身を見つめ直すことができたと語った。以前は孤独感や不安に悩んでいた彼女が、詩を通じて心の中にある小さな光を見つけられるようになったという。
「詩を書くことで、自分がどんなことを感じているのかを素直に表現できるようになったんです。最初はただ言葉を並べるだけでしたが、少しずつ自分の気持ちを詩に乗せて伝えられるようになりました」
美咲はそう語りながら、自分で書いた詩を千草と香織に見せてくれた。
「小さな光」
暗闇の中で、ひとりぼっちだと思っていた
けれど、心の奥には小さな光があった
その光が、少しずつ大きくなっていくのを感じながら
私は自分を見つめ直している
この小さな光が、いつか私を照らして
新しい道を見つけてくれることを信じて
千草と香織は、その詩を読みながら美咲がどんな思いで詩を書き続けてきたのかを強く感じ、胸がいっぱいになった。
「本当に素敵な詩だね。美咲さんが自分と向き合って、新しい一歩を踏み出そうとしているのが伝わってくるよ」
香織が優しく言うと、美咲は少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。詩が私にとって、心の支えになっているんです。これからも詩を書いていきたいし、もっと多くの人と詩を通じて繋がっていきたいと思っています」
千草も微笑みながら、「美咲さんが詩を書くことで、きっと他の人の心にも温かい光が届くと思います。詩を通じてお互いに支え合える関係って、本当に素晴らしいですね」と語りかけた。
その後、三人はお茶を飲みながら、詩について、人生について、これからの夢について語り合った。美咲はこれまで抱えてきた不安や孤独を少しずつ詩に変えることで、自分自身を癒し、他者とのつながりを求めるようになったと話してくれた。
「いつか、私も詩を通じて誰かを支えられる存在になりたいです。詩がくれた温かさを、今度は私が誰かに届けたい」
美咲が力強くそう話すと、千草と香織は心からの拍手を送った。
「きっと美咲さんならできるよ。私たちもこれから一緒に詩を広めていけたら嬉しいです」
千草は美咲の夢を応援し、三人で新たな詩のプロジェクトを始めることを約束した。
こうして、千草と香織に新たな仲間が加わり、彼女たちは詩を通じて人々の心に温かさと希望を届ける活動をさらに広げていくことを決意した。美咲も加わった新しいチームは、詩のワークショップやフェスティバルでの活動をより一層盛り上げ、詩が誰にとっても身近で心の支えとなる存在にしていくための挑戦を続けていった。
詩がもたらす出会いとつながり、その可能性は無限に広がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます