第3話 第1章ー②
ーそれから3ヶ月後
転生した事実を知った自分は、この3ヶ月間見聞きした情報を元に、現状を把握することにしたわけなのだが、まずこの世界は元居た世界とは全く違う世界のようだ。要するに異世界ってことだ。オタクにとっては喜ばしいことこの上ない世界だ。 なぜか異世界の言語をすでに理解しているのだが、なぜなのかは自分にはわからない。ひょっとすると死んだあと、神様とかに会って色々能力を授かったりしているのかもしれない。ただ、その記憶は自分にはないから、他にどんな能力を授かったかも不明なのが気になる。まあ、神と対面してたらの話ですけど。
今居る場所は、クルーシア王国の辺境にあるドレーカという小さな村だ。この小さな村で自分は生まれた。両親もこの村で生まれたそうだ。父はしばらく王都の方で働いてて、帰郷した際に母と知り合ったそうだが、正直両親の馴れ初めとかはあんまり興味ないので割愛。
父は王国騎士団の元副団長を務めいて、実はけっこうすごい人。母との結婚を機に騎士団を辞め、故郷であるドレーカに家庭を築くことにしたそうだ。今は村の人の手伝いを稼ぎにしつつ、自給自足のために小さい畑を所有している。騎士団で稼いだ貯金は自分のような子供が産まれたときのために使わないようにしてたらしいというのをたまに家に飲みに来る父の飲み仲間が酒の肴として話していた。ちなみに余談だが、その人に抱っこされそうになって泣いて抵抗したことが何度かある。この身体だとマジでちょっとしたことで命を落としかねないし、酔っ払いに抱っこされるのは父であっても不愉快だ。無論、その泣き声を聞きつけた母に叱られるのはお約束のことだ。
他にわかったことといえば、この世界は魔法が存在する世界であるということが判明した。これはオタクの自分としては朗報だ。異世界転生したって感じがこの二文字で実感が湧いてくる。
魔法は普段から日常的に使われていたりする。何度も目にしているから疑いようのない事実である。父は火の魔法を得意としており、火気を扱うときは家でも村でもかなり重宝されている。火は生活において必須な存在だしな。冬場とかは大変そうだ。しかし、王国の騎士団で副団長まで上り詰めた人が、今は村の火起こし役とはな。騎士団の人たちがそれ聞いたらどんな反応するだろう?
騎士団で思い出したが、この世界には冒険者という職業も存在するらしい。それには自分もニッコリ。
ただ、冒険者ギルドなるものはないため、個人で仕事を受けたりパーティー募集しなければならない。前世でぼっちだった自分にはかなりハードルが高そうだ。いちおう各所に掲示板が設置してあり、そこに依頼とかパーティー募集の張り紙を張っているのを見たので、それを見て行動している冒険者も多いのだろう。実際に冒険者らしき人が掲示板をじっくり眺めている光景を何度か見ている。冒険者というだけあって、危険な魔物の討伐とかあったりするのだろうか?
魔物で思い出したが、この世界には魔王が存在しているらしい。大人たちの飲み会で度々その話題が持ち上げられ、議論されるぐらい魔王問題は深刻化しているようだ。
魔王は400年以上前から存在しているようで、人類と長きに渡って敵対しているらしい。魔王は多くの魔物を従え、各国の村々に進軍し、略奪や虐殺を繰り返しているらしい。なかには奴隷のように扱われている村もあるのだとか。まるでヴァイキングのような傍若無人っぷりだ。
魔王には『
しかし、人類はそれに対抗しうる存在を探し当て、その者を『勇者』と呼び、人々に希望の光をもたらしたそうだ。
そう、この世界には勇者も存在する。今でも勇者と呼ばれる人が世界中を回って人々を助けているらしい。その話を聞いて、大人たちは歓喜の声を上げるのも度々聞こえてくる。
それにしても、勇者に選ばれる人は大変そうだな。世界中の人々の期待を一身に背負うわけなのだから。子供の自分(この世界ではまだ0歳児だが)だったら、勇者に憧れたりするもんなのだろうけど、現実の厳しさを色々と体験してしまった自分からすれば、勇者に憧れるというより同情しそうになる。勇者からすればハイリスクローリターンなのだから。ハッキリ言って、そこまで危険を冒すだけのメリットがあるようには思えない。各国の優秀な人材をたくさん集結させて、その十死なんちゃらの幹部を一人ずつ倒せばいいと思ったりもするのだが、そう上手くはいかないものなのだろうか?
そういえば、魔王軍とは二回ほど大きな戦争があったという話を聞いたことがある。その戦争は『魔界大戦』と呼ばれており、十死怪と魔物の軍勢数万が一つの国を侵略しようとし、各国が協力して軍勢を集結させるほどの大きな戦があったそうだ。勇者はもちろんのこと、多くの優秀な冒険者や騎士、魔術師等諸々で数では人類が優勢だったのだが、それでも多くの犠牲を払いなんとか撤退させるのが手一杯だったそうだ。しかも二回とも。それだけ魔王軍の力が強力なのだろう。そう考えると、数で押せばなんとかなるっていう相手ではないのか。
「さてと、そろそろサダメもミルクの時間かなー」
家事を終えた母は、ゆりかごに乗った自分を抱っこし、自分に授乳を促すように自らの乳を差し出してくる。こんな美人の乳を合法的に吸えるのは役得だと最初は思ったが、不思議と興奮することはなく、自分はされるがままに母の乳を吸う生活を送っていた。ぶっちゃけミルクはもう飽きた。
―転生勇者が死ぬまで、残り9910日
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