禍福の章~夏生(なつき)編~

少年は初めて配達員として、上得意客に指名された。

第2話

 RRRRR…


「有難う御座います、香澄かすみ生花店です」


 中年夫婦が経営する、小ぢんまりとした街の花屋。


 何時もの様に、唯一人の店員の少年が、店の電話を取って、客に応対する。


「…修藤だ」


 馴染の、上得意客だ…少年は、即座に察知する。


「あ、Dr.(せんせい)!

 何時も御世話になって―」


「―何時もの薔薇を。


 今日は、うちに…君が届けてくれ」


「!


 はい、かしこまりました」


 赤、白、橙、黄…

 紫、桃…

 そして、青……


 鮮やかな花束に、シンプルなラッピング。


「おや、珍しいねェ?

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