攫われた少年―三角公園

第2話

 200X年・初夏の黄昏時。


 小学五年生の孤児・撫養むやただし(10)は、下校途中の通学路で、赤い乗用車から顔を覗かせる二十歳はたち前後の男に、近所の道順を尋ねられた。


「ココ…『三角公園』だよねぇ?

 『iマート』、どっちの方角になるのかなぁ…


 チョット、コッチへ来て…

 キミの指先で、ボクに教えてよぉ?」


 明るい髪色の小洒落た男は、人好きのする男子学生にしか見えなかった。


「はい…」


 侃は、駐停車している彼の車の助手席側に近寄り、目標物の方向を、己の手で示そうとした―

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