第24話
「若いんだから似合う、似合わないとか気にせず、好きな洋服着なきゃだめよ?」
加藤さんがフォークで上手に巻いたパスタを口に運びながら言う。
「うちの会社、女性はスーツじゃなくてもいいんだよ?ジーンズとかじゃなければ直江さんも普段着で来ていいからね」
「えー、直江さんの普段着ってどんな?見てみたい〜」
瞳を輝かせる田中さんには悪いが、たぶんスーツと大差ない。いつもシャツに黒のパンツのワンパターンだから……
「スカートとか履かないの?」
「え?」
小首を傾げた田中さんの質問に一瞬固まってしまう。私のこの
「あー……似合わないので。女装してるとか思われそうだし」
また自虐に走ると「えー?!そんなことないよぉ!」と田中さんの茶色い眉が釣り上がる。
「直江さんスラッとしてるし、絶対似合う!たとえ似合わなくても髪とかメイクで洋服に自分を寄せることだって出来るんだから!」
「ふふ、田中熱入りすぎ。まあ、直江さんが好んでパンツスタイル選んでるならそれでいいじゃない?
でも、スカート着ないのが似合わないって理由だけなら、タイトスカートとかどうかな?」
「タイトスカート……ですか?」
密かに憧れつつも制服以外でスカートを履こうと考えたことのない私の興味を誘う単語。
「ストレート型の体型だから私もフレアスカートとか似合わないんだけど、タイトスカートなら可愛すぎず大人っぽく着られるから良く着てる。直江さんもスカート着てみたいなら挑戦しやすいんじゃない?」
「なるほど……」
確かに膝下丈のタイトスカートとかなら、まだ履いてる自分を想像できる気がする。
「俺も見てみたいな、直江さんのスカート姿。きっと似合うよ」
「……」
スカートを履いた私。……ちょっとは、女として意識してもらえるだろうか。
このとき頭に浮かぶ対象はただ一人。関係の変化なんて望んでいないのに、無意識に浮かぶから嫌になる。
別に可愛いと思って欲しいとか高望みはしないけれど……、「へぇ、似合うじゃん」くらいは言ってもらえるかもしれない……なんて期待しちゃって。
「か、買ってみます……!」
「お、いいね!買ったらぜひ着てきてね。見たい!」
馬鹿みたい。……馬鹿みたい、だけど。
守ってばかりの今までの自分よりはマシな気がして、はじめての挑戦にトクトクと胸が高鳴った。
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