第11話 体育祭準備と前哨戦

「それでは、球技大会の選手はこれでいきます。みんな頑張って優勝しようね!」


「「「おう!」」」


 授業後に少し時間を取って決めた球技大会の選手決め、秋宮に流されてバレーのところに俺の名前が書かれている。


 圭はサッカー、健二はバスケ。帆夏さんは茅野さんと同じ女子サッカーに名前があった。


「楓くん、委員会あるよ」


「朝そんなこと言ってたな。どこだっけ?」


「生徒ホーム、また遅刻したらなんか言われるよ」


「確かに、はよ行こ」


 帆夏さんと横並びで生徒ホームに向かう。屋上の様に盛り上がる様な会話はなく、少し気まずい。2週間くらい殆ど会話がなかったからかどう話せばいいか忘れた。


 生徒ホームに入ると半分くらいの人しかいなくて、空いていた後ろの方の席に座った。


「楓くんはバレーに出るんだね、前はサッカー部だったんでしょ?」


「秋宮にバレー誘われたんだよ」


「秋宮くん?仲良かったっけ?」


「今日の体育でな、殆ど仲良くないけど強引に誘われた」


「そーなんだ、サッカー出ると思った」


 少しだけ残念そうな顔をして球体の運営についてのプリントに視線を落とした。よく分からないけどサッカーにしとけば良かったかな。


「それじゃあ、球技大会の運営についての連絡をする。プリントに書いてある通り体育委員が当時出欠を取ったり、一部設営があるからな」


 当日は体育委員がペアで運営をしていくらしい。帆夏さんと一緒にか、今なんか気まずいんだよな。


「とりあえずよろしく。初日の数回だけだし」


「うん。ちょっとめんどーだけどね」


「今日あそこ行く?もう校内とか殆ど人いないけど」


「いや、今日バイトあるから。また今度かな」


 あっさり断られた。まあ元々シフト入ってただけだよな。そうだよな…



 球体まで1週間、俺たちは優勝を目指して業後に解放している中学校の体育館に練習しに来ていた。


「かえでー上げるぞー」


「おっけ」


 ネットと並行に上がったトスに合わせて跳び、ジャンプの最高点をボールと合わせて腕を振り抜く。


 手のひらが少し熱くなって打った球はネットの上を通って相手コートに跳ねて体育館の壁に当たる。


「よっしゃあ。ナイストス」


「ナイス、黒崎!まじでバレーの経験ないとは思えないわ」


「あんがと。荒木もナイスレシーブ」


「ミスったなあ、黒崎をバレーに誘わなきゃ俺たちの優勝は堅かったのに」


 ブロックに跳んでいた相手チームの和樹が愚痴を零す。俺たち7組と和樹たち8組は球体が始まる前からバチバチに戦っている。


 俺たち7組は俺と秋宮のダブルエース、それを支えるバレー部リベロの荒木。他3人は上手くはないけど3人で優勝を目指せるメンバーだ。


「かず!俺らも負けてらんねえな」


「当たり前だろ。本番は7組ぶっ倒して優勝するからな!」


「「「8組ファイト!」」」


「僕らも負けないよー、こっちにはかえでがいるからねー」


「よっしゃ再開するぞ」


 どちらのクラスも気合いを入れて試合を再開した。俺たちのチームがサーブを入れて試合が動き始めた。


「「よっしゃもってこい」」


 レシーブはネット近くへ綺麗に上がり左右に和樹ともう1人がボールを呼ぶ。


「かえでーそっち跳んで」


「了解」


 相手セッターは俺でない方のサイドに球を振った。でも秋宮ともう1人がコースを限定する様にブロックを跳んで、空いてるコースに打たれたスパイクは荒木がしっかり上げた。


「秋宮いくぞ!」


「わかったー」


 俺の上に上がったボールを少し跳んでオーバーハンドでトスをあげる。俺が跳んだと同時に秋宮も飛び相手のブロックを跳ばさないAクイックを叩き込んだ。


「よっしゃ!ナイス!」


 秋宮とハイタッチを交わしてゲームが進んで行った。



 3点リードでマッチポイントを迎えて最後のサーブ番が和樹に渡った。


「かえでー拾えるよー。逸れたらそーたに任せたよー」


「「任せろ」」


 和樹は数回ボールをドリブルして大きく投げ上げた。そのボールに跳び強烈なジャンプサーブが俺の少し横に飛んできた。


 腕を伸ばすが勢いが殺せず後ろの壁にぶつかった。腕の皮膚が少し赤くなった。


「よっしゃぁ、このままサービスエースでこの試合貰うぜ」


「どんまい、とりあえずあげてくれたら何とかするから」


「すまん、次は上げる」


 また和樹は大きく投げ上げたボールに飛ぶ、そのボールはさっきより強烈な勢いで打ち出された。


 その球はコート内ではなく背中の壁に一直線で飛んでいった。


「よっし!7組の勝ちやなー」


「ごめーん、やらかしたわ…」


「本番は入れろよな、今日は仕方ない」


 7組の勝ちで試合が終わって俺たちの前哨戦は終わった。閉館時間が来て片付けをして体育館を出た。


「それじゃ全員気をつけて帰れよ、本番は7組には負けねえからな!」


「もちろんー、勝つのは僕らだけどねー」


 解散の号令に各自荷物を持って自分たちの帰路へ向かった。


「楓すごいな、めいが話してたけど経験者に見えたよ」


「ありがと、荒木もスパイク上げんのすげえな」


「まあ本職リベロだからね。優勝いけるよ」


「おう頑張ろうな!」

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