第4話 おおらかな人

 和樹たちの笑い声で目が覚めた。若干酔いが覚めて頭がクリアになっている。


「お、楓おはよ。先に飛ばしすぎだろ」


「やけ酒したわ、水くれ」


 大輝に差し出された水を1口飲んで時間を確認すると8時過ぎだった。


「そいえばこれ酒代な。調達どうも」


「俺のも置いてあるよー。なんか女の子狙う前に詰んだらしいじゃん?」


「怜央は女を取っかえ引っ変えだからいいよな。こっちは目を付けて2日でお釈迦だよ」


 そのまま飲み会を続けてみんなかなり出来上がった。怜央のヤッた話やら大輝の今カノの惚気やら、色々俺の心の傷を酒で洗い流した。


「おいー。大輝ー、タバコ付き合えよ」


「おーう。ベランダ使うぞー」


「もう和樹は潰れてるよ。俺が潰してやった、早くから飲んでたからな!」


「いってらー」


 タバコに火をつけて、ライターと1本のタバコを大輝に渡す。ベランダの手すりに2人寄りかかってタバコを吸う。


「楓も大変だな。かずに振り回されて」


「まあ、振り回したり振り回されたりするのか俺達だしな。たまにイラッとするけど、そんなに嫌いじゃねえ」


「はは。そうだな、楓とかこいつらとバカやるのは好きだから」


「あーセンチメンタルになんのも終わりだ、終わり。また次行くだけだしな!」


 そんな雑談をしたながらのんびりとタバコを吹かした。中野さん結構どタイプだったんだけどな。顔よし、おっぱいも和樹的に言えば結構ぼいんぼいんだったしなあ。


「飲み直しするぞ」


「付き合うよ、明日に影響無い程度なら」


 ベランダから潰れた和樹とそれを軽く介抱する怜央がいた。


「あーかっちゃん。ちょっとベットに運ぶの手伝ってよ」


「りょーかい、りょーかい」


 家主を他所にして3人で飲み明かした。



 あったま痛ってえ。ちょっと深酒し過ぎたな。やり過ぎた。


「おはよう、黒崎くん。大丈夫?」


「あー?あ…中野さん…おはようございます。ちょっとやり過ぎた」


「結構買ってたもんね。二日酔い?」


「そう。というかなんか楽しそうだね」


「珍しいなーって。ここの高校ぼちぼち頭良いから、黒崎くんみたいな人」


 そう言って少しだけ笑った中野さんがとても可愛かった。というかチクられなさそうでちょっと安心した。


 というか昨日のやけ酒はなんだったんだ。別に全然詰んでないやんけ。結構おおらかな人だったんだな。


「そういえばこのアカウントって黒崎くん?」


「ん。あーそうだよ」


「フォローしとくねー。それと…お酒とタバコは程々にね」


 耳元でコソッと心配の様な言葉を貰った。それにインスタのフォローの通知と中野さんの言葉で二日酔いなど消えていった。


「おい。黒崎ぃ、俺とお前は一生の友だと思ってたぞ」


「いや。まあ、そういうこともあるだろ」


「おはよ、何話してんの?」


「おはよう。俺が朝練終わって教室に来たら楽しそうにしてやがったんだよ。まあ成瀬もそっち側なんだけどな!」


 朝から元気過ぎる健二、俺と圭は少し困惑していた。昨日は俺もそっち側だったんだけど。


「おはよー。連絡するから席つけよー」


 戸田先生が教室に来てショートホームルームが始まった。


「来週の火曜日にシャトルラン以外のスポーツテストするから体力賞とかを狙うつもりの人はこの休日に調整しとけよー、体操服も忘れないように。後はプリントを掲示しておくから確認しておくように」


 そういえばこの時期はスポーツテストあるよな。最近筋トレもしてないし久々にジムで鍛え直すのもありだな。


「それとクラス役員決めを今日のホームルームでするから何やるかとか考えとけよー」


 中野さんと会話の特効薬は既に切れてまた頭が重たくなってきた。髪の毛結んでるのも窮屈だな。やり過ぎたわ、ちょっと控えよ。


 そのままショートホームルームから机に突っ伏して意識を飛ばした。



 途中、色々な授業で起こされては2度寝3度寝を繰り返して二日酔いと不足した睡眠を補った。


 4限のホームルームが始まる時には復活して前には戸田先生が立っていた。


「それじゃあ言ってた通りクラス役員を決めるぞー。室長と副室長から決めて、その後は2人に任せる。終わって時間があれば席替えするつもりだから、したいなら早めに終われよー」


「それじゃあ、室長やってくれる人いるかー」


「はい、私やります」


「茅野さんだけだな。前期の室長は任せた、よろしく頼むぞ」


 何となくクラスチャットの時から感じていたけど茅野さんが立候補して、そのまま室長になった。それを見て健二の目の色が変わったように見えた。


「副室長やってくれる…」


「俺やります!」


「おう…杉原か。他の立候補は無いみたいだし、前期副室長は任せたぞ」


 健二が気迫で手を挙げようとしてた男子を押さえつけやがった。先生ちょっと戸惑ってるし。


「じゃあ2人はこの後の役員決めを任せる。教卓に係の名前と人数が書いてあるから上手く決めてくれ」


「分かりました。それでは、役員決めをします。黒板に係と人数を書くからその間は周りとかと相談しててね。杉原くん書くの頼める?」


「もちろん」


 あいつ焦らないとか言ってなかったっけ?めちゃめちゃ先手打ってるけど。色欲と性欲の前には止まれないってことか。

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