第6話
「嫌でも結婚!嫌いでも
勢いのままに告げると、海里は「はっ、酷い言い草」と小さく笑ってワイングラスの底を上げる。
「何よ、あんただって同じ気持ちのくせに」
「俺?俺は別に。昔から決まってたし、結婚を見越してスロープアシストに就職したわけだし」
「良いわよね、こだわりのない人って」
「は?」
「自分の人生にこだわりがないから躊躇することも悲観することもなく。好きでもない相手とのつまらない人生を受け入れられるんだ」
「お前な……」
相変わらずグチグチ呟く私に呆れた声を上げる海里だが、続く言葉はすんでのところで飲み込んで、代わりに深いため息が空気を揺らす。
「……そんなに嫌ならお前から破談を申し出れば良いだろ」
「いやよ!そんなの。負けたみたいじゃない」
「……誰にだよ」
「あんたによ。海里は承諾してたけど私が我儘言いましたーみたいになるのが嫌。嫌ならあんたが破談申し出てよ」
「クズ女」
「は?今なんつった」
今にも喧嘩が勃発しそうなところ、バッドかナイスかわからないタイミングでお皿を下げに来たウエイターさん。
「すぐに次のお食事お持ちします」
「はい、お願いします。それと彼女に次の飲み物を……」
「それじゃあ、彼の飲んでいる白ワインをいただけますか?」
「かしこまりました」
こういうとき、阿吽の呼吸で【恋人】を装えるのは、嫌いながらも長年婚約者を続けてきた成果かもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます