第2話

「あー、月間成績出てたんだ。それで機嫌悪いんだな」


「……(見てすらいないのかよ)」



私なんて1ヶ月間今か今かと待ち続け、共有ポータルサイトにリストがアップされる午前10時ぴったりに確認したというのに……この男は今日が月間営業成績の発表日だということすら忘れていたらしい。


王者の余裕か?見なくても自分の順位は不動だってか?それで本当に不動なんだから本当むっかつく!!



「今回も2位?」


「うるさい!あっち行け!」


「子どもかよ」



自分の順位確認は端折って私の順位を当てにくるこいつが憎い。今回こそ……今回こそはこいつの悔しさに歪む顔が拝めると思っていたのに。


「見せて」と自分の席で確認すればいいものを、私のパソコンを覗き込んでくる天敵に苛立ちを募らせていると、背後からコツコツと革靴の音が近づいた。



土方ひじかた、今回も絶好調だったな」


「どうも」


「前から勧めてもらってた大型契約と併せて新規も10件。先日、Fクリニックの松田院長と会食だったんだが、土方のこと褒めてたよ」



やってきたのは我がスロープアシスト株式会社営業一課の松前課長。我々の直属の上司にあたる。


「どうも」って何よ。本当愛想のないやつ。営業職なんて愛想があってなんぼなんじゃないの?


この無気力フェイスで契約ポンポン、ポンポン……もう賄賂を渡しているとしか考えられない。

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