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「これ、結婚式の時に飲むといいよ」


結婚式前日、そう言って弟はサプリメントを手渡してくれた。


「コレ飲むと何かあるのか?」

「緊張が解れるよ」


カプセル状のサプリメントに眉を潜めて弟に訊ねる。


「また何かのイタズラか?ヒトの祝い事にも容赦無いなぁ……」


そう笑って言ったら、珍しく弟はうかない顔をしながら告げる。


「別に…飲みたく無かったら飲まなくてもいいよ」


やけに元気が無かったから、これは本物なんだろうと有り難く受け取った。


「わかった。緊張したら飲むよ」

「うん…結婚おめでとう」

「…ありがとう」


後ろ向きで顔も合わせず放たれた祝福に、俺は御礼を述べる事しか出来なかった。


そして、現在───。


腹が痛いと部屋に閉じこもる弟を置き去りに、俺達は挙式を上げていた。二人の門出を祝う親族や友人ら、一つだけの空席に眉を潜めて頬を綻ばせながら式は進行されて行く。弟から貰ったサプリメントも利いているのか、緊張はさほど感じられなかった。


ただ、少し気分が冴えないが……。

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