魔法少女おじさんに未来はない

マッキーイトイト

前章

一日目:

1-1:欺瞞

・・・




──おじさんは魔法少女である。




 ちょっと意味がわからないと思うが、文字通りなので他に言いようがないのだ。

 おじさんには前世の記憶的なものがあって、前世では普通のおじさんとして生涯を全うしていた。

 といっても結婚もせず趣味らしい趣味もなく、割と適当に生きてたのでちゃんと全うできてたかは少し疑問なのだけど。

 まあでも普通に仕事をしてお金を稼いで旨い飯を食って、平均的に見ればそんなに悪い人生とは言えないんじゃないかなぁ。

 死因も病死だったけどあんま苦しんでないし。


 そんなこんなで死後の世界に旅立つかと思われたところ、気づいたら人生2周目みたいなのが始まっていたというわけ。

 とはいえ最初は前世と大した違いもなかったので至って平和な青春ライフを送っていたのだけどね。




 この世界に違和感を感じたのはおじさんが女子中学生になりたての時。なんかこの言葉の違和感のがすごいかもしれないが気にしない。


 そうそう、今のおじさんは超絶美少女だ。背丈が豆粒で少しばかり胸が薄いがそれを補って余りある顔面偏差値を誇っている。自画自賛だけど過大評価ではないはず。

 ちなみに妹もいて超かわいい。母もかわいい。父も無難と言えば無難だけどそれなりにカッコいい。いい人って感じ。


 というか転生効果なのか、そもそもおじさんの周りには結構容姿が整った人たちが多かったりする。女子の友達も男子の友達も、普通にレベルが高い。

 ……あ、いや、今のおじさんに友達はいないんだが。うん。ボッチです。でも、不細工な知り合いってのも全然いない気がする。



 まぁそれはともかくとして、全力でそんな第二の人生を謳歌していた時、ふと頭に変な映像が浮かぶことがあったんだよね。

 それはこれから先に起こりそうな出来事がダイジェストみたいな形で順不同で流れていく、といったようなもので。








 そして実際に、その出来事は、現実に起こった。








 まぁ、ありきたりな表現をすれば未来視みたいなもんよ。


 きっかけはあんまり覚えてないけどおじさんは気づいたら未来が見えるようになっていたのだ。


 そんな、急に降って湧いたようなチート能力におじさんの中の少年の心が少しだけ興奮したものの、残念ながらおじさんはネタバレというものが世界で一番嫌いだったりする。

 なのでこんなチートやっぱいらん……! 封印……! ってしたかったけどしばらくは能力の制御ができなかったので頑張って訓練したんだ。

 その過程で色々わかったこととして、この力はいわゆる魔法的なもので、魔力という不思議パワーを使っているらしい。


 少し説明が長くなったけど、そんなこんなでおじさんはいつの間にか魔法少女と呼べるような存在になっていたわけ。

 といっても魔法少女によくある変身みたいなものも特にないので見た目は何も変わらないし、そもそも力を使わなきゃならない機会なんてほとんどなかったから、結局のところ表面上は生活は何も変わらなかったんだよね。

 あと訓練してたらなんか手からビームとかも出せるようになったけど、こんなん日常のどこで使うんだよと。






 せっかくだからちょっとだけおじさんが使える魔法についても紹介しておこう。

 おじさんは『未来』属性の魔法少女だ。こう名乗るとかっこよかろ?


 特技は手からビーム。

 それと未来を見ること。





 そして、辿





 よくわからない? そうだなぁ……。

 例えば、空き缶を適当にゴミ箱へ投げるとする。ゴミ箱は2つ投入口がある蓋がついたタイプのアレだ。

 普通に考えればまず入らないだろう。だけど、入る可能性はゼロではない。

 可能性が存在するなら入る未来は必ず存在する。そしておじさんはその未来を観測して選択できる。

 そうすると、あら不思議。傍目には百発百中で入ってるように見えるんだな。

 まぁ実際は裏で大量に入らない未来を見せられてるからけっこう疲れるのだけども。

 もっと簡単に言えばリアルTASみたいなことができる。未来視はあくまでそのための手段にすぎないってことだ。


 というか能力が万能すぎて草も生えんのよ。文字通り、不可能なこと以外はなんでもできてしまう。

 きょうび無双物の主人公でもこんなチートもってないやろと。こんなん日常生活のどこで必要になるんやと。

 いや、日常で悪用しようと思えばいくらでもできるけど、そんななんでも思い通りになるようなズルして人生楽しいか? っていう話。

 理由は他にもあるけど、とにかくおじさんは第二の人生をそんな虚しいものにしたくなかったので、こんなチートは封印して平和に生きていたんだよね。

















 ……でもね。


 こんなおじさんみたいな変な存在がいる時点でこの世界が単なる平和な世界のわけなかったんだよね。


 他にもおじさんみたいな、でもおじさんとは決定的に違う、

 本当の青春を送るべき年若い子供達が、血を流し、命を落とし、

 平和の裏で何も知らない人々のために、世界を守るため戦っている。


 そんな現実を知ってしまったら、おじさん大人だから見て見ぬふりはできないんだよ。

 おじさんが何もしないで日々を過ごす間に、犠牲になる子がいる。

 そんなの、受け入れられないでしょ。だから、さ。


















 おじさんが魔法少女たちのハッピーエンドを目指すRTA、はぁじまぁるよー!

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